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「俺は、ずっと、捜してる人が居るんだ。でも、名前しか、覚えていなくてな…好き、だったと、記憶にはあるんだが……」
一目惚れしたはず、なんだ。でも、顔が思い出せない。とても愛しかったはずなのに、名前しか分からなくて。好きなのに、そんなのおかしいに決まってる。
「何だか素敵ですね…愛しい方をお捜ししているなんて、きっとジュリエットさんもロミオさんを待っていると思います」
「…どうだかな……名前しか覚えていないなんて、女性からしたら有り得ないとか思うんじゃないか?」
夢ではぼんやりと姿が出て来るのに、起きれば名前しか覚えていられないなんて。ジュリエット、お前に会えば何か分かるのか…?
不思議とモヤモヤした気分ではないのがまた疑問でもあった。俺にどうしろというのだろう、何をしたらよいのだろう
「私も、ロミオさんと同じように導いてくれる名前だけは記憶にあるんです。ただ、それが────。」
言葉が切れた、途端に気まずそうな雰囲気になった。どうした?と促せば、渋々口を開いた。
「女性ではなくて、男性のようなんです。何か私に喋り掛けて来るのですが……起きた時には、もう覚えてなくて」
「そう…なのか」
俺と同じように夢の記憶が定かではないが、男が何か喋り掛けて来ることまで俺よりはっきりしているみたいだった。
兎にも角にも、お互い思い出せないのではどうしようもなく。しかし、ずっと此処に居ても何も解決はしないだろう
「アトランティス、お前は陸の上で生活は出来ないのか?」
再び水に触れている様子を見て何となくそう思った。少しでも触れていれば問題はないのだろうか
「出来なくも、ないですが…海に居ると、悲しいです。でも、海に居ないと苦しいです」
「なんだそれは」
分かりません、と苦笑される。俺は海の中で生活は出来なさそうだった、そもそも人魚でもないしな
(アトランティス、か……)
膝まで海に浸かっているアトランティスを見ながら考えた。記憶がはっきりしてしまえば、此処がどこなのか、彼が誰なのかも分かるのだろうか
疑問はやはり尽きそうにもなく、だからと言って何もしない訳にはいかない。お互いの共通点は夢と記憶、という点だけだった。
(記憶が何かの鍵になっているとしたら、ただの夢ではないのかもしれないな)
この世界自体もよく理解出来ていない以上、肯定してしまってはいけないだろう
「アトランティス、俺に協力してほしい」
え?と彼は振り返った。唐突にこんな申し出する方がおかしいだろうか
「せっかくの縁だしな、俺もお前に協力出来ることなら協力する」
「そうですね…ロミオさんが宜しければ」
「よし、決定だ」
そうして俺とアトランティスの、目的が曖昧な旅が始まるのだった。
それで、と俺は口を開いた。
「これからどうすれば良いだろう?」
「…手掛かりはあるようでないですからね」
「何しようにも出来ないな」
蒼い青年2人、海の浜辺で棒立ち。第三者からしたらきっとシュールな図になっていることだろう
突如、アトランティスが右手で左腕を掴みながら手の平を構えて止まって下さい!と俺の背後を睨みながらそう言い放った。
考え事をやめた時、ざくざくと砂の音も止んだ。やや振り返ると全体的に紅い女が立っていた。
周囲には勾玉がふよふよと浮かび、枝分かれした不思議な形をした長剣を持っていたのだ
「そう警戒するな、私はイザナミ。そなた達をアド…バン?アド……バイス、そう、アドバイスしに来た!」
(アドバンスって言おうとしたな)
(横文字を使おうとなされたのですね…)
「それで…アドバイスとは一体何だ?」
「アドバン…ス?違った、アドバイスだ!そなた達も迷える者達とお見受けした。誘導するが務め、そこの男!」
ビシ、と指を差されたがほぼ同じ位置に居るがためにどちらか分からない
「「どっち!」」
「そっち!ええと…そこの魚男か」
「さ…魚男とは失礼な、私にはアトランティスという名前があります!」
手をわなわなとさせている。内心笑ってしまったのは心に秘めておこう
「アトランティスよ、そなたは海に身を潜めて暮らしていたようだな。長く独りで居たがために考えることを忘れてしまっている」
え?と彼は怪訝な表情を見せた。俺もその発言に疑問を抱いた。そもそもアトランティスは海の中で考え、悔いているようにも見受けられた。
一目惚れしたはず、なんだ。でも、顔が思い出せない。とても愛しかったはずなのに、名前しか分からなくて。好きなのに、そんなのおかしいに決まってる。
「何だか素敵ですね…愛しい方をお捜ししているなんて、きっとジュリエットさんもロミオさんを待っていると思います」
「…どうだかな……名前しか覚えていないなんて、女性からしたら有り得ないとか思うんじゃないか?」
夢ではぼんやりと姿が出て来るのに、起きれば名前しか覚えていられないなんて。ジュリエット、お前に会えば何か分かるのか…?
不思議とモヤモヤした気分ではないのがまた疑問でもあった。俺にどうしろというのだろう、何をしたらよいのだろう
「私も、ロミオさんと同じように導いてくれる名前だけは記憶にあるんです。ただ、それが────。」
言葉が切れた、途端に気まずそうな雰囲気になった。どうした?と促せば、渋々口を開いた。
「女性ではなくて、男性のようなんです。何か私に喋り掛けて来るのですが……起きた時には、もう覚えてなくて」
「そう…なのか」
俺と同じように夢の記憶が定かではないが、男が何か喋り掛けて来ることまで俺よりはっきりしているみたいだった。
兎にも角にも、お互い思い出せないのではどうしようもなく。しかし、ずっと此処に居ても何も解決はしないだろう
「アトランティス、お前は陸の上で生活は出来ないのか?」
再び水に触れている様子を見て何となくそう思った。少しでも触れていれば問題はないのだろうか
「出来なくも、ないですが…海に居ると、悲しいです。でも、海に居ないと苦しいです」
「なんだそれは」
分かりません、と苦笑される。俺は海の中で生活は出来なさそうだった、そもそも人魚でもないしな
(アトランティス、か……)
膝まで海に浸かっているアトランティスを見ながら考えた。記憶がはっきりしてしまえば、此処がどこなのか、彼が誰なのかも分かるのだろうか
疑問はやはり尽きそうにもなく、だからと言って何もしない訳にはいかない。お互いの共通点は夢と記憶、という点だけだった。
(記憶が何かの鍵になっているとしたら、ただの夢ではないのかもしれないな)
この世界自体もよく理解出来ていない以上、肯定してしまってはいけないだろう
「アトランティス、俺に協力してほしい」
え?と彼は振り返った。唐突にこんな申し出する方がおかしいだろうか
「せっかくの縁だしな、俺もお前に協力出来ることなら協力する」
「そうですね…ロミオさんが宜しければ」
「よし、決定だ」
そうして俺とアトランティスの、目的が曖昧な旅が始まるのだった。
それで、と俺は口を開いた。
「これからどうすれば良いだろう?」
「…手掛かりはあるようでないですからね」
「何しようにも出来ないな」
蒼い青年2人、海の浜辺で棒立ち。第三者からしたらきっとシュールな図になっていることだろう
突如、アトランティスが右手で左腕を掴みながら手の平を構えて止まって下さい!と俺の背後を睨みながらそう言い放った。
考え事をやめた時、ざくざくと砂の音も止んだ。やや振り返ると全体的に紅い女が立っていた。
周囲には勾玉がふよふよと浮かび、枝分かれした不思議な形をした長剣を持っていたのだ
「そう警戒するな、私はイザナミ。そなた達をアド…バン?アド……バイス、そう、アドバイスしに来た!」
(アドバンスって言おうとしたな)
(横文字を使おうとなされたのですね…)
「それで…アドバイスとは一体何だ?」
「アドバン…ス?違った、アドバイスだ!そなた達も迷える者達とお見受けした。誘導するが務め、そこの男!」
ビシ、と指を差されたがほぼ同じ位置に居るがためにどちらか分からない
「「どっち!」」
「そっち!ええと…そこの魚男か」
「さ…魚男とは失礼な、私にはアトランティスという名前があります!」
手をわなわなとさせている。内心笑ってしまったのは心に秘めておこう
「アトランティスよ、そなたは海に身を潜めて暮らしていたようだな。長く独りで居たがために考えることを忘れてしまっている」
え?と彼は怪訝な表情を見せた。俺もその発言に疑問を抱いた。そもそもアトランティスは海の中で考え、悔いているようにも見受けられた。
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額を拭い、夢の中で喋り掛けてくる女性を捜しに俺は途方もなく歩いた。様々な目的を持つ奴等がたくさんいる中で、その一人を見つけることなんて出来るのだろうか
俺はロミオ、モンタギュー家の一人息子だった。ある日、誘われたパーティーへ行くとジュリエットと名乗る女性に一目惚れした記憶がある。だが、次に会った時の彼女は死んでいて、そのショックで俺は毒殺した。
───はずだったのだが、気が付いたら二丁拳銃を持って此処にいた。途切れたような記憶しかないし、毒を飲んで自殺した記憶だけははっきり覚えているのか何となく喉も気持ちが悪い
(記憶の中の女性と……ジュリエット、は…同一人物なのだろうか)
此処は死後の世界なのか、よく分からないが人型も居れば機械やら…動物やら……。幸いにも危害を加えてくる者は今のところ居ない
周りを見渡すと、一際目の引く蒼い男が海の底で座っていたのだ。不思議に思い、近付いてみれば人間ではなさそうだった。
肌は青く、ヒレのような耳を持っていて、落ち込んでいるような様子が見られた。気になる奴は周りに結構居たが、海の中でひっそりと居たのはその男だけだった。
「そこの者」
呼び掛けても反応はない、俺の声が聞こえないのだろうか。ペシペシと水を叩くが、やはり聞こえていないようだった。
海に入るわけにはいかないので、海底にある近くの岩に向かって狙いを定めた。視線の先であるし、狙撃する心配も二次被害もないだろう
ドン、と撃てばさすがに気付いたようでこちらを驚いたように見てきた。随分と憂いのある男、という印象を受けた。
驚かせただろうか、確かにいきなり目の前で銃撃されたら俺も自分が狙われたと思うだろう。恐る恐る手招きをすれば、困ったような表情をしながら海から上がって来た。
「な…何ですか?いきなり撃ってくるなんて…恐ろしい方ですね」
「それはすまないとは思っているが、お前を取って食おうとしたわけじゃない」
拳銃を仕舞い込み、海辺にある岩に腕を組みながら腰を掛けた。蒼い男は肘を掴みながら怪訝な表情をして見せた。
「この辺りに詳しくないんだが…知っていることがあれば教えてほしいんだ」
「……私より、先にこの世界に来たのではないのですか?」
「先だろうが後だろうが、分からないものは分からない」
そうですか、と分かったようなそうでないような呟きをして考え込み始めた。
「そうですね、ではまず貴方のお名前をお聞かせ下さい」
「ロミオだ」
ごく普通に名乗ると、彼は少し驚いたような様子だった。疑問を抱くような表情で窺えば失敬、と手で制してきた。
「貴方はロミオとジュリエットに出て来るロミオさんだったのですね」
「ん?え?俺と…ジュリエット?」
“ロミオとジュリエット”に“出て来る”ロミオ、だって?出て来るって…一体どこからだ?疑問を抱いたが、きっと尽きない疑問だと察した。
「あまり気になさらないで下さい、この世界ではよくあることです。早速ですが、私の知っていることもそんなに多くはありません」
「そうか…参ったな」
目的、か。ジュリエットを捜したいところだが、此処の居場所がどこなのかも分からないのでは捜すにも捜せない。
ちら、と蒼い男を見れば後ろ姿が見えた。どうやら海の水に触っているらしく、時折水を軽く叩いているようだった。一体何をしているんだろう
「ところで、お前の名前は?」
「あ…名乗り遅れました、私はアトランティスと申します。お聞きしたこと、あるでしょうか?」
(アトラン、ティス…?)
唸っていると、ないかな…と悲しげに呟いているのが聞こえた。何なんだろう、この男は。寂しそうな、切なそうな表情ばかりする。
「すまないが分からない…が、さっきからなぜお前はそんなにも泣きそうなんだ」
「過ちを犯したんです……だから、私は、」
何かしてはならないことをしてしまったのだろうか、会った時よりもかなり沈んだ表情になった。その過ちに悩んでいた間はずっと海に居たのだろうか
「……私は、どうしたらいいか分からないんです。でも、何か、してはいけないことをしてしまったことは記憶にあるんです」
憶測するなら、アトランティスが過去にしてはいけないことをしてしまったのだろう。それは何かが、分からなくてどうしようもない、と彼は呟いた。
「俺と一緒だな、俺も記憶がないんだ」
肩に手を置けば、鱗模様の肌がしっとりとしていた。憂いの顔しか見せてくれなかったが、アトランティスは少し驚いたように見えた。
俺はロミオ、モンタギュー家の一人息子だった。ある日、誘われたパーティーへ行くとジュリエットと名乗る女性に一目惚れした記憶がある。だが、次に会った時の彼女は死んでいて、そのショックで俺は毒殺した。
───はずだったのだが、気が付いたら二丁拳銃を持って此処にいた。途切れたような記憶しかないし、毒を飲んで自殺した記憶だけははっきり覚えているのか何となく喉も気持ちが悪い
(記憶の中の女性と……ジュリエット、は…同一人物なのだろうか)
此処は死後の世界なのか、よく分からないが人型も居れば機械やら…動物やら……。幸いにも危害を加えてくる者は今のところ居ない
周りを見渡すと、一際目の引く蒼い男が海の底で座っていたのだ。不思議に思い、近付いてみれば人間ではなさそうだった。
肌は青く、ヒレのような耳を持っていて、落ち込んでいるような様子が見られた。気になる奴は周りに結構居たが、海の中でひっそりと居たのはその男だけだった。
「そこの者」
呼び掛けても反応はない、俺の声が聞こえないのだろうか。ペシペシと水を叩くが、やはり聞こえていないようだった。
海に入るわけにはいかないので、海底にある近くの岩に向かって狙いを定めた。視線の先であるし、狙撃する心配も二次被害もないだろう
ドン、と撃てばさすがに気付いたようでこちらを驚いたように見てきた。随分と憂いのある男、という印象を受けた。
驚かせただろうか、確かにいきなり目の前で銃撃されたら俺も自分が狙われたと思うだろう。恐る恐る手招きをすれば、困ったような表情をしながら海から上がって来た。
「な…何ですか?いきなり撃ってくるなんて…恐ろしい方ですね」
「それはすまないとは思っているが、お前を取って食おうとしたわけじゃない」
拳銃を仕舞い込み、海辺にある岩に腕を組みながら腰を掛けた。蒼い男は肘を掴みながら怪訝な表情をして見せた。
「この辺りに詳しくないんだが…知っていることがあれば教えてほしいんだ」
「……私より、先にこの世界に来たのではないのですか?」
「先だろうが後だろうが、分からないものは分からない」
そうですか、と分かったようなそうでないような呟きをして考え込み始めた。
「そうですね、ではまず貴方のお名前をお聞かせ下さい」
「ロミオだ」
ごく普通に名乗ると、彼は少し驚いたような様子だった。疑問を抱くような表情で窺えば失敬、と手で制してきた。
「貴方はロミオとジュリエットに出て来るロミオさんだったのですね」
「ん?え?俺と…ジュリエット?」
“ロミオとジュリエット”に“出て来る”ロミオ、だって?出て来るって…一体どこからだ?疑問を抱いたが、きっと尽きない疑問だと察した。
「あまり気になさらないで下さい、この世界ではよくあることです。早速ですが、私の知っていることもそんなに多くはありません」
「そうか…参ったな」
目的、か。ジュリエットを捜したいところだが、此処の居場所がどこなのかも分からないのでは捜すにも捜せない。
ちら、と蒼い男を見れば後ろ姿が見えた。どうやら海の水に触っているらしく、時折水を軽く叩いているようだった。一体何をしているんだろう
「ところで、お前の名前は?」
「あ…名乗り遅れました、私はアトランティスと申します。お聞きしたこと、あるでしょうか?」
(アトラン、ティス…?)
唸っていると、ないかな…と悲しげに呟いているのが聞こえた。何なんだろう、この男は。寂しそうな、切なそうな表情ばかりする。
「すまないが分からない…が、さっきからなぜお前はそんなにも泣きそうなんだ」
「過ちを犯したんです……だから、私は、」
何かしてはならないことをしてしまったのだろうか、会った時よりもかなり沈んだ表情になった。その過ちに悩んでいた間はずっと海に居たのだろうか
「……私は、どうしたらいいか分からないんです。でも、何か、してはいけないことをしてしまったことは記憶にあるんです」
憶測するなら、アトランティスが過去にしてはいけないことをしてしまったのだろう。それは何かが、分からなくてどうしようもない、と彼は呟いた。
「俺と一緒だな、俺も記憶がないんだ」
肩に手を置けば、鱗模様の肌がしっとりとしていた。憂いの顔しか見せてくれなかったが、アトランティスは少し驚いたように見えた。