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(御客様、一名入リマス―――。)


「アレクセイ…」

元々暗い部屋は彼の漆黒の姿を更に染めた。
ブーツの音がなぜだか高く響き、私は震えた。

『ローウェル君……私に何の用かね』

後ろに回された両手首にがっしりとした手枷が嵌められていて、あまり動けない。
彼は私を見えない所から見下しているようだった。

私が俯くと、彼は膝をついて私と同じ顔の高さまでにした。
暗くて見えなかった彼の顔がはっきりとした。

間近で見ると整った顔が鮮明に映し出された。
私は唇を緩めた。

『恨みを…晴らしに来たのか?』

「…そうじゃねぇよ…!」

ユーリは勢いよく私の胸倉を掴んだ。
ずい、と引き寄せられて私は息を飲んだ。

「あんた、信用されてたのに…どうして誤った……」
彼の口から出たのは私の考えと一致した。

『帝国に、絶望した…ただそれだけのことだ』
「あんたならっ!」
激しく揺さ振られ、彼がぼやけて見える。

「あんたなら…変えてくれるって、誰もが望んだんだぜ!?」


誰かに似ているようだ

私に反抗する、誰かに


『懐かしいな』

「………」


今更どうこう言ってもどうしようもない。


『ローウェル君、君の親友をきちんと支えてやりなさい』

「おい…」

『私は、愚かで犠牲をたくさん作り、このような結果を生んだ』

「テ、メェ…」

『それと―――――。』

私は微笑んだ。
しかし、それもすぐ歪んだ。


『…レイヴンを、頼んだ…』

「おいっ、アレクセイ!?」



私は暗闇に掻き消された。

これ以上は話をさせてはいけない、と


続く階段は下り方向

さぁ、私に傷をたくさん刻むが良い

いくつでも受けてやろう


私が、この場所で生きているうちなら

いくらでも

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(御客様、一名入リマス―――。)


「アレクセイ、様…」

暗い階段を降りて来たのは、紫の羽織りを着た男ではなかった。
左目を隠し、橙色の服装に黄金の鎧を纏った私のよく知る人物だった。

『シュヴァーン、か…』

私を縛り付ける鎖は重く響いた。
それに必要以上動かない為、それは慣れない音だった。

「アレクセイさ『よせ』

『私は愚かな人間だ、今更尊敬の意を示すな』

背中越しには黒く、見えない壁があるのを感じる。
ずっしりと身体に違和感があり、疲れが時々伝わる。

「違う、んです…俺、は……っ」

シュヴァーンが、勢いよく近寄って来た。

「俺は、好き…でした……アレクセイ様、が…」

足を正座の形にして、俯くシュヴァーンは見たとおり暗かった。
私は震えてはっきりしない手で、シュヴァーンの頬に触れた。

『私は、それを受け取る事は出来ないのだ……』

「ア、レクセイ…様……」

碧の目が揺らぎ、それは光った。
その光った粒は下り、軽く弾んで返った。

『ありがとう、シュヴァーン』

「!…アレクセイ…!!」

段々彼が見えなくなる。

嗚呼、私はこれから地獄をさ迷う。

それは永遠に、尽きることがない。

毎日が永久、終焉が永久


『許されない』

私はゆっくりと瞳を閉じた。

一生、醒めぬその夢を

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