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ノックをすれば無言の応答
明かりが漏れているため、居るのは分かっているのだが

いつものように、部下の部屋にはノックしてすぐ入るのだが
今はそんなこと、出来なかった。

「シュヴァーン…?居るのだろう?」
「―――――えぇ、居ますよ」

久々に聞いた彼の声
なぜだかホッとする。

「…けど、仕事…溜まってるならさっさとやらないと、間に合いませんよ」
ドアノブに手をかけようとしたが、それは途中で止められた。

「っ……そうだな、悪かった」
「謝る事なんて、無いですから」

それを聞いて、私は静かに立ち去った。




あれから、いつぐらい経ったろう

アレクセイはまた仕事が忙しくなり、部屋すら出ない
シュヴァーンもまた、部下とのやり取りで忙しくなっていた。


「シュヴァーン隊長、今日はもう結構です」
部下であるルブランが書類を手にまとめてそう言った。
「なぜだ?まだあるはずだが…?」
「何をおっしゃいますか、後はこちらに任せたと申したではないですか」
そうだったか?と尋ねれば彼は深く頷いた。

「あ、それと アレクセイ騎士団長閣下がお呼びになっていましたぞ」
「…いつ頃だ?」
「昼前だそうです」
それを聞いてしばらく黙るシュヴァーンにルブランは眉を潜めた。
「シュヴァーン隊長?」
呼ばれてシュヴァーンはハッとなった。
「あ…あぁ、悪い もういいぞ」
「はっ、失礼します」



色々考えていくうちに、昼を迎えた。
ノックして名を名乗ればいつもの対応
静かに部屋へと入って行った。

「あの…何でしょう」
「…もう少しこちらへ来なさい」
渋々来るシュヴァーンだったが、やはり何だか避けている様子

「シュヴァーン…?」
流石にその変な様子が伝わる
「何でしょう」
「…私が、何かしたか?」
「いいえ」
返答にアレクセイは眉を潜めた。
「なら、なぜ…「ご用件は何ですか?」
言葉が遮られ、アレクセイは一瞬だけ固まった。
「…すまん、何でもない……」


目が、伏せられた。


今度はシュヴァーンが尋ねる番になった。
「何でもないって……それは一体「帰れ」
ぴしゃりと、短く言い放たれた。
「…帰れと、言っている」
「……はい、失礼しました」
威圧に負けて、シュヴァーンは部屋から出て行った。




何やっているんだろう

俺は、

ああ

見えない壁が邪魔をしているのか

なんて馬鹿な事なんだろう

私は、

こんな事をしたかった訳じゃない

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夜も真っ只中
風はやけに煩く
時に寂しく語る
私は一つ溜息をついた

「アレクセイ」

視線を向ければシュヴァーンが居た。
彼は私の元に来て手元を見つめた。

「アレクセイ」

もう一度、先程より低い声で呼ばれる
しかし私はそれを無視した。
すると、彼は私の頬に両手を添えた。

そうすれば止まる私の手

「シュヴァーン」
そう言って声で制すが無駄だった。


「ん、……」

静かに重なる、私と彼の唇
温度が直に伝わる
何だか無駄に心地良くて

「ッ…ダメ、だ……」
私は顔を横に反らした。

「アレクセイ…」
足りなそうに私を見る。



「…明日には……」
「………」


シュヴァーンが黙っていると、髪が撫でられた。
鎧のしていない彼の手は優しくて

「もう、いいですから…満足です」
俺は彼の手を掴んで、そっと離した。

「すいません」
謝れば少し揺らぐ彼の瞳
逃げるように部屋から出た。

彼の声が聞こえた気がするが、邪魔は出来ない



暗い真夜中の廊下
俺は泣いた



朝から何だか騒がしく、気になった。
そこらの情報の早い兵に事情を聞けばアレクセイが倒れたということらしい

俺は、迷った。


会いたい
けど、会ってはいけない


会ったところで俺に何が出来るのか
そうだ、何も出来やしない




「シュヴァーン……」
ようやく一人になって呟いた最初の一言

嗚呼、彼も迷惑だというのに
居心地が良くて、すぐに想ってしまう

淡い期待が巡る
(…会いたい……)

緊張する体を抱きしめるように横になる。
けど、結果的には体調管理すら出来ない私を見て失望するだけだろう


(はっ…馬鹿馬鹿しい)

甘ったれるな
そう、強く自分に叱った

つもりだった。




容態は悪化した。

頭はズキズキ痛む
身体は思うように動かないし、自分でも分かるくらい熱い
脈も普通以上にドクドクいってて気持ち悪い

医者はただの熱とおっしゃった。
熱も油断出来ない、そんな暢気な思考だった。


しかしそれも頭痛によりすぐに吹っ飛ぶ
「はぁ……痛、い…な……」
頭に手をかざし、しばらくその体勢



熱は三日目でようやく治った。
仕事をせずに三日経ってしまったため、アレクセイは今日も徹夜

早く終わる仕事が三日も溜まればそれはそれで量がある。
しかし、その前にやらなければならないことがアレクセイにはあった。

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(御客様、一名入リマス―――。)


「アレクセイ……」

顔を上げれば、そこには綺麗な顔立ちをした人が居た。
二十歳にも達していないというのにしっかりした子だ
カツ、と靴の音を鳴らして歩いて来た。


『来てはなりません、姫様』
「いいえ」

こちらへ来てはいけない

『いけません』
「いいえ」

来てはならないから


「アレクセイ」

花のような彼女の服は、まさにぴったりだった。
似合うでしょうか、と尋ねに来た頃が懐かしい
しゃがんだ彼女は私の顔を両手に沿えた。

『駄目です、姫様』
「アレクセイ」

彼女のはっきりした顔が目の前に現れた。
私はなぜだか、視線を反らせなかった。


「あなたは誤りました」
『……』
「もっと良いやり方を考えられなかったのですか?」
『……』
「あなたがいつ、ああなってしまったのかは分かりません」
『……』
「でも、ですね…」
『…はい』
「私、アレクセイがくれるあのキャンディ」
『えぇ…』
「好き、だったんです、よ……」
『……』
「いつも、楽しみ、でし…た……」


『姫様』

懐から袋に包まれたキャンディを取り出した。
『いつもあなたの為に、取り寄せてました』
「信用を失わない為、ですか?」
『半分はそうです…もう半分は…』
アレクセイは彼女の手を離させた。
それから袋を彼女に押し付け、離れた。

『もう、時間のようです』
スッ、と離れた。
「! ま、待って下さい!」
彼女は慌てて私を掴もうとする。

『立派に、生きて下さい…姫様』
「アレクセイ!!」

彼女の声は、広く響いた。



『好きでした』



それが裏目に出る事は哀しかったけれど

私はもう、引き返せない位置に居たのです。



コロン... コロン、コロン...

キャンディがボロボロと零れ始めた。


「美味しかったです、よ…」

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