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「来る…な…」

「……お前には、私が必要となるだろう」
小刻みに震える手を取り、温度を繋ぐ

「お前は今まで独りだった
今ここで私を拒否するならお前はずっと独り
あの悪夢、何度も繰り返され…やがて蝕みに来る」

そう伝えると、更にアレクセイは震えた。
少し、驚かせてしまったようだ

「お前が私を、永遠に必要とするならば、その不安もやがて消えるだろう」

「デューク……」
アレクセイは、自ら私に近付いて来た。

「私は、わたし…は…独りが……きら、い」
「ああ、それはよく分かっている」

ゆっくりと抱き留めれば、彼は息を吐いた。
「独りは…もう嫌だ……」
「私にしか、お前を幸せには出来ない」

そう言うと、アレクセイの朱い目が揺れた。
「事実だ、お前の部下は結局お前を狂わせた原因なのだから」

アレクセイは、やや俯いた。

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冷えた洞窟、そして檻
私は、色を見た


「……あ」
発声、どうやら正常らしい

ゆっくりと体を起こし、見渡す。
初めて来る場所、匂い、風、肌、気持ち


「アレクセイ・ディノイア」

びくりとし、振り返った。
不意に現れた彼は、懐かしかった。

「私、は…どうしてしまった…?」
「そんなことは、もういい」

彼は私を抱き留めた。
細く、華奢な体に、温度を感じる。


だが、内側には沸々と嫌悪感を感じた。


「よせッ!?」
無理矢理引きはがし、私は退いた。

「…っ……嫌だ、来るな…!!来るなァっ!」
しかし、彼は私を追い詰め、距離を縮めた。

「…ひっ!」
伸ばされた手、その人差し指が私に触れた。

「や、やめろ…!私に、触るなァ!」
手を放ったはずが、それは受け止められた。

「何をそんなに怖がる?」
「嫌だ!私に、触るな!!」


感じれば、震えているのだった。

ああ、この男は 知らぬうちに孤独を歩んで行く性質らしい
だがそれも、これまでだ


「案ずるな、私は アレクセイ…お前を手放しはしない」

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私は、存在自体が迷惑だ
そんなことは、私が一番よく知っている。

私を殺そうと狙う者も、居るのだ
それも、かなり私を恨んでいる。当然だ

だが、私は凛々の明星の一員として、今は居る。
ならば、迷惑はもう、その時点で掛かっているのだ

許して貰おうとは思わない
私が生涯出来る事は罪を償う事だ


まだ私は死ねないのだ


例え命を狙われようが、私はまだ絶てない
様々なものから終止符を打たねばならない


(そうだ、凛々の明星は――――)


今の私にとってかけがえのない存在なのだ

これからは、きちんと向き合って行こう
私はそれを、胸に深く刻み込んだ。




「アレクセイ、おはよう」
「モルディ「リタって呼んで」

目をぱちくりさせた。

「リタ…ッお!?」
リタは、私に倒れ込んで来た。
顔を覗けば、寝息を立てているようだ。


(!……ありがとう…)


すっかり動く体で、彼女を抱き上げた。
それからゆっくり、寝かせてやった。


(仲間…私の、仲間…)


『…きちんと、やることやってから諦めろ!』
今までの事が、思い出された。
『単純にあんたには死んで欲しくないだけだ』
どうやら私は、ずっと答えの無い道を自ら選んでいたようだ
『あんたはあんたでしょ!?』
解決せず、暗雲ばかりの下を選ぶ一方で
『“仲間”としてまだ、居られないからじゃろ』



ガチャリ、と 扉が開かれる。
何かと思い、視線を向ければあの犬が
「大将、おはようございます」
レイヴンが朝食を持ってきてくれたらしい
「ワフッ」
犬は静かに座り、私を片目で見ている。

「ここに置いておきますね」
それに頷き、試しに犬に手を差し延べてみた。
すると犬は私の手の匂いを嗅ぎ、数回舐めた。

「…ラピード?」
初めて名を呼んでみる。
そう言うとラピードは何度か尻尾を振った。

「俺達が檻に嵌まった時、わんこは避けてたみたい
それでデュークに会ったらしいわ」
「そうなのか…ラピード、ありがとう」
青い毛を流れるように撫でてやれば、軽く懐いてくれたらしい

「……人間とは、感覚が違うんでしょうね」
レイヴンが近くの椅子に座りながらそう言った。
「俺達よりもラピードは何かに早く気付いていたみたいだし」
敵わないわ~、と ラピードをわしゃわしゃして戯れ始めた。


そんな光景に私は微笑み、朝食を頂く事にした。
温かなスープが喉を潤すような感覚に、安堵した。

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