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「ギルドの仕事、しばらくは休みを取る事にしたよ」
少年が急にそんなことを言いはじめた。

「あら、どうして?」
ジュディスが眉を潜め、首を傾げた。
「最近ギルドの仕事ばかりだったでしょ
少しくらい休みを取るのも必要だからさ」
「やるなぁ、カロル先生」
ローウェル君がうんうんと頷いた。

「リタとパティはどうする?」
「あたしは一緒で良いわ、まだ特に掴めてないし」
モルディオは即座にそう言った。
「うちも…まだ居たいのぅ」


皆それぞれに別れ、憩いを求めに行った。


私は金髪の少女を見た。
「……話があるのだが」
少女は止まって、そして頷いた。
「いつじゃ」
「出来れば、今」
一つ瞬きし、少女は再び頷いた。
「移動、しようかの」






「居ても立っても居られないってか?」
アレクセイとパティの行く方向をレイヴンは見ていた。
そんな様子のレイヴンをオレは見ていた。
「ユーリ…」
まぁ座れよ、と 促し、お互いに座った。

「パティちゃんは…失礼だけど、何だかんだで最年長なわけだしね
気持ちの整理だったり、どう生きるのかはもう分かってると思う
…それでも、やっぱ大将のことは許せないだろうし…」
次々と口にして行く
「…まぁな…、そりゃアレクセイだって分かってるだろ
それをオレ達が支えて、アレクセイを導いてやるべきじゃねぇのか?」
そうなんだけど、と どこか腑に落ちない表情のレイヴン

「…それと、ごめん アレクセイの心臓のこと…
もっとレイヴンに早く言うべきだった」
「ううん、別に気にしなくて良いんよ」
レイヴンは一つ苦笑した。

「俺、今はアレクセイが心配なんだわ…」
碧の瞳は、暗がりを増していた。
「―――――オレだって、心配だ…
でも、アレクセイは一つ一つ向き合わなきゃならねぇ
それはアレクセイ自身がやらなきゃいけないことだ」
自分に呼び掛けるように、オレは言った。
「……そうだわな、ちゃんと…見守ってやらなきゃ」
レイヴンは一つ頷き、力を抜いた。






小部屋入り、“彼女”とは対にある椅子に座った。
彼女は、大きい目を 細めた。
「……私が」
私から、切り出した。
「私が貴方に出来ることはないだろうか…」
やや俯き、彼女を見つめた。
「―――――……そうじゃの…」

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私は、相変わらず、立ち止まった間々だった。
もう、嫌なのだ、嫌なんだ――――!



「アレクセイ」
少年が、私を、小さな腕で抱きしめた。

「難しいかもしれない、辛いかもしれない
でも、アレクセイになら分かるんじゃないかな …“仲間”の大切さが
例え結果がどうであれ、シュヴァーンもそうだったはず
支えてくれたのはそれが“仲間”だったからじゃないかな」
は、と 顔を上げた。

「僕は待ってるよ、アレクセイがいつか気付いてくれるって」
無意識に、一つ、雫が床を湿らせた。

「……ッ!…う…」



そうだ、仲間が居たから
私もやっていけた

気付かなかったんだ、本当の意味に





「…ありがとう…」



「――――どう致しましてっ」






ようやくアレクセイも動けるようになり、仕事を上手くこなしていった。
「えっと、ジュディスとアレクセイは倉庫の方 頼んで良い?」
アレクセイは頷き、進んで行った。

「…貴方、どうしたの?」
後ろから問われ、アレクセイは振り返った。
「カロルと仲が良い感じに見えたわ」
「…少し、な 私も分かって来たような気がするのだ」

そうなの、と 彼女は荷物を引っ張り出していた。
「……じゃあ、私の事をはっきり呼んで欲しいわ」
「…え?」

どういうことだ問い掛ければそのままよ、と彼女は立ち上がった。
「貴方にもはっきりとあるでしょ
“アレクセイ・ディノイア”
それが貴方を示す、立派な名前」


「ジュ、ディス…か……?」
そう言えば彼女は、ジュディスは笑った。


「初めて呼んでくれたわね」
笑顔が目から、頭から離れなかった。






「名前、か……」
休憩中に、何度も繰り返した。

気恥ずかしさと、戸惑いから中々名前で呼べなかったが
名前を呼ぶ、それは一つだから

(レイヴン…)




そうか
名前は、存在なのだ

それが汚れていようが
私はそれで存在する


ぽっかり開いた穴が、静かに埋まった。
立ったのだ、私という私が




(なら、私のすることは)


精一杯に罪を償う事
例えそれが辛いものであろうが
私は立ち向かわなくてはならない

そして、流すのだ
私の愚かな計画で死した人へ


体が軋もうが 関係ない
私が必ずやらなければならないのだ

私の代わりなんて居ないのだから
私がやるのだ、私が 絶対に

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何がカロルをここまで成長させたのか
「レイヴン、仲間だよ 仲間」
にっこりとカロルは笑い、部屋へと戻って行く
入れ代わりにパティがベランダに出る。
「……うちはまだ迷っとる」
「パティちゃん…」

それもそうだ
大切な、何もかもをアレクセイに壊された。

「うちはまだ、認められん」
「パティ、ちゃん…」

強く、深い蒼い瞳は、よく見えなかった。




それよりも、あの胸
アレクセイの心臓

考えられるのは一人
デューク・バンタレイ


なぜ、アレクセイを生き返らせたのか

生き返らせて悪かったのかとか
そういうことを言いたい訳じゃないが


生まれて、死んで
その循環を無視して生きる事は何より恐ろしく

酷く、孤独であるのだ


今のアレクセイの精神では支えきれない


とりあえず、彼が生きている事に感謝した。
何も考えずに、何も無かったかのように






深く、黒い沼から這い出し、顔を上げた。

「……、………!」

私に気付いたクリティアの娘が近付いて来た。
「待って、動かないで」

乾く身体がむず痒い
「これ、飲んで…」
疑問を投げ掛ければ彼女は軽く頷いた。
「治療薬よ」
独特な液体が喉を落下する。
飲み、コップを預けた。

(…あ……)

開かれた胸
心臓魔導器が、現れていた。

「…皆、見たのか……?」
彼女はゆっくりと頷いた。
そうか、と 呟くだけに終わった。


「………っ…」

覚えている
記憶の隅にはっきりと

「レイヴン…そうだ、レイヴンは…!」
怒りと衝撃を含んだ瞳が、繰り返される。

「落ち着いて、今はゆっくり休みましょ」

力のこもった指が、緩んだ。


「リタが貴方の魔導器を見てくれたわ
頭の怪我で記憶障害があるけれど、じきに治るそうよ」
「…感謝、する」

力が抜けて、ぽす と音が、手が落下する。



霞が掛かった緋には、誰も気付かない

探しても、聞いても、求めても

遠い、遠い 彼方のお話






翌朝、重い暗闇から目覚め、覚醒する。


「……誰、か…」


「誰、か……っ」



少年が、私に近寄って来た。
「どうしたの?」

澄んだ眼が、やけに苦しかった。
それでも、誰か、誰か、私を――――。


「アレクセイ…?」
ベッドから落ちるのも気にせず、少年にしがみついた。
「ど、どうしたの…っ?」
「………このままで…」


少年は承諾してくれた。

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