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びくん

アレクセイの身体が跳ねた。
「拒否反応を起こしてるっ…」
焦ったようなリタの声

アレクセイは動かない
口からは血が静かに伝った。
ジュディは布を押し当てた。

びく、びくびく

「ッ!お願いだから…っ」


魔導器からの拒否反応
アレクセイの記憶障害


「ッ!」

リタが操作盤を最後に押した時にはアレクセイの口内には血溜まりが出来ていた。

「……心理状態が元々悪かっただけに最悪ね」
後悔したようなリタの顔にオレは何も言えなかった。

「…でも、記憶障害についてはそんなに心配いらないわ
……ジュディス、血、取ってくれる?」
「分かったわ」
アレクセイの口内に溜まった血溜まりをジュディは掻き出していた。

「……」
あまりに哀れ過ぎた。
オレはいたたまれない気持ちでいっぱいだった。






ベランダに出て、空気を目一杯に吸い込んだ。
よく透き通る酸素が吸収される。
それから吐き出し、見えないものが抜けて行く

まだ“あの名”と“あの名を呼ぶ主”が居たとは
厳密には、まだ“あの人”が居たとは
揺さ振られる心情が嫌だった。
(……もう、繰り返しちゃダメ…)

あの人にはもっと笑ってほしい
純粋に、何も後ろめたいものもなしに


「レイヴン」

やや身長が伸びたカロルの声が後ろからした。
カロルの後ろには海賊の帽子が覗く
「…アレクセイは治るよ」
俺を見て、そう言ったのだろうか

「……僕ね、アレクセイに言われたんだ
『君は私を憎め、一生 憎むべきなのだ』って…」
少年の顔は真剣そのものだった。
「でも、僕は憎んでないよ 憎む理由が僕にはないから」
そう語るカロルに俺は眉を潜めた。
「…じいさん…いや、間接的にドンを殺したのはアレクセイなのに…?」

「僕ね、孤独が嫌いなんだ」
話をカロルは反らし、少し歩いた。
「孤独はとっても怖い、一人、独りぼっち」
カロルはやや締まった顔で言う
「アレクセイは、今でも孤独なんじゃないかな」

「僕は昔のアレクセイは知らない でも、孤独、そう取れる」
ああ、カロルは思い出しているのか
様々なギルドを巡っては失敗してばかりな孤独の自分を

「だから僕は憎み切れない」
カロルは、早かった。
顔は分かっていた。

アレクセイは罪を犯した。
しかしそれでもアレクセイを一人にしてはならないと

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相変わらず心臓は私を戒め続けた。
胸を力強く握り潰されるような

圧迫感が、押し寄せる
身体が冷え切って来た。

頭に鳴り響く警鐘が非常に喧しい
苦しくて、息を吐いたが吐血だけだった。

「ッ!!!!」
目を見開き、涙が溢れ出る

赤い、ものが、碧の玉が、私を捉えた。

目を閉じたら、終わる
しかし、逆らえなかった。

滑る坂を下り、呆気なく落下した。








重苦しい瞼を退け、光を探した。
「大将ぉッ!!」
大粒の球体の、透明さがあるものを彼は零した。
「……」
「大将…ッ」
縋り付いた彼に自分は疑問の視線を投げ掛けた。

彼以外にも、自分の周りには人間が居た。
黒、茶、青、それと黄

重いだけの空気を、切り開くのを人間達は待っている。

「……私は、急がなければならない…」
ざわめく気持ちを抑え、起き上がろうとした。
「ダメですって!大将っ」
「なぜだ、私の言う事が聞けぬのか “シュヴァーン”」




「え」




彼が石像のように固まった。
まるで最初からそこにあったかのように

「あんた…」

黒い人間は言った。
自分を、鋭い眼で見ている。

「計画はどうなったのだ…全く、役立たずめが」
淡々と語れば、固まる人間達


「“シュヴァーン”、私と共に来い」

「私は間違ってはいない、そうだろう “シュヴァーン”」

「はははは!!頼もしいぞ“シュヴァーン”!」


数々を吐いた後、鈍い音が頬を軋めた。
静かに彼を見いやれば、黒に碧の瞳が怒っていた。
それからそれは、消えた。








「……頭の怪我が原因で、記憶障害になっているようです」
医者はそう言い、詳細が記された紙の束をリタに渡した。
「…治療が済んだなら後はあたしがやるわ」
リタは仲間以外を払い、無理矢理気絶させたアレクセイの胸に触れた。

オレは一人、唾を呑んだ。
音を辿ると、レイヴンは私室に戻ったはずだ

「……ユーリは知ってたの?アレクセイに心臓魔導器があるって」
リタは操作盤を叩きながらオレに尋ねた。

「……ああ…、落ち着いた時に、皆に話す予定だった」
そう、と リタは相変わらずの間々だった。


「…僕、レイヴンのとこ行くね」
「うちも行くのじゃ」
そう言ってカロルとパティは出て行った。


「……デューク、かしらね」
ジュディが考え込むようにしてそう言った。
「逆にデューク以外当て嵌まる人物なんて居ないわ」

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「……まだ、嫌悪感は解けそうにないけど…」
モルディオはせわしく自らの指を絡めたり、解いたりしていた。

「でも、あたしなりには考えた
確かにあんたはバカでどうしようもない事をした…」
けど、と モルディオは繋げた。
「…バカみたいに、…優しくて…拍子抜けしたわ」

心外な言葉に私は口が半開きになった。
「や、優しい…?」
特別なことをした覚えはないのだが
「…あたしはあんたを試したの
あたしにあんたがどう接するか、ね」
思い返せば、モルディオはかなり私への恨みは剥き出しだった。

「私は……レイヴンの仲間である君を失ってはいけないと思ったからだ」
そう言えばモルディオの目は大きく開かれ、やがて怒りに満ちた。
「あんた、バカじゃないの!?
何がレイヴンよ!あんたはあんたでしょ!?
…あたしはあんたを少しでも良い関係に変えようと思ってたのに…
あんたは…“レイヴンの仲間”だからここに居るの!?」

モルディオは、どこか悲しそうだった。
「………もういい…」
肩の力が抜け、少女は一つ息を吐いて部屋へと入って行った。



「………」
しばらく呆けていた。

(しかし、私は……)

こんな状況下ではああとしか言えなかった。
少女の言いたい事も分かる
だが、私にはまだ…早いのだ
彼らを“仲間”と呼ぶなんて


そういえば、先程の話からしたら
少女はあの時私を試したと言った
私がちゃんと“仲間”として動けるのか

…私が加害者にされたのは気にしないことにしておく




「“仲間”とは表面付き合いだったかのぅ?」
驚いて振り向けば、小さくて大きな少女
私の横を通り、モルディオの居た位置辺りに立ち止まる
「お主はまだ、迷っておる
“仲間”としてまだ、居られないからじゃろ」
静かに視線を向ければ重く蒼い瞳が刺してくる

「…“うち”は、あくまで表面だけじゃがの」
ベランダから少女は静かに降りて行った。


ほう、と 一息つく
(仲間、か……仲間…)

頭を振り、一旦部屋に戻った。
日が暮れると下町は寂しく、寒く感じる
感情的になっているだけかもしれないが




「ぅ……あ゛ッ…!?」

矢が身体を貫くような
爽快で不愉快な気分

これは
本能が呼び掛ける

抑えなければ、抑えなければ!!!!

震える手で操作盤を展開し、命令を下そうとするが
言うことを聞かない手が非常に鬱陶しい


「あ゛あ゛ぁああ!!!」
軋む身体が反響した。

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