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翌朝、妙に身体が重かった。
しかし、ギルドの仕事を休む訳にはいかない

再び宿でローウェル君と同室になったは良いが、彼はもう起床したようだ

(起きなければ……)

手に力を込め、立ち上がる、が



急に視界が揺れ、私は見事に転倒してしまった。
ガタガタン、と 凄い物音が響いた。

「ぐ…ッ」

「アレクセイ!…大丈夫か?」
ローウェル君が駆け付け、私を起こしてくれた。
「す、まん……」

ベッドに横にされ、ローウェル君は息を吐いた。
「顔色悪いぞ?貧血じゃねぇのか?」
「かも、しれないな…何も考えたくない…」

考えるだけで頭が痛むような

「今日は休め、無理されたら困るんだ」
「いや、しかし……」
ローウェル君は私の側に寄り、寝かせて来た。

「無理、してほしくない」
強く、しっかりそう言われ、私は渋々横になった。



ローウェル君達はギルドの仕事を行っているようだ
「で、監視があたしなわけ」
鋭く猫のような目つきに見え、息を呑んだ。


(まだ―――――)

少女はあの時の間々、誤解しているようだった。
今更どう出来る話ではないから、小さく息を吐くだけに留まった。

そしてまたやや不満げに金髪の少女は私を遠くから睨んでいた。

(……あの目は)

察する前に頭に激痛が走り、私は唸った。
ダメだ、考えること自体が痛みだ

どちらにせよ、ぐらぐらした思考じゃ何もしようがない
しばらく睡眠を取ることにした。






頭では、分かっていた

あの青年の言う事にも一理ある

だが私は、振り返らなければならないのだ

私自身の戒めが解かれてはならぬと

しかしその戒めがまた、私の過去に繋がれていて

巡れば私の感情、理想、心理を司るのだ



それを

簡単に消すことは

したくない、のだ






「!」
びくりと体が嫌に反射し、驚きに目を覚ます。

「………」

辺りには誰も居なかった。
監視を任されたモルディオや海賊の少女も

とりあえず外の空気が吸いたい
そう思ってベランダに出ればモルディオが居た。


「…起きたの?」
「迷惑なら戻る」

そうじゃない、と 相手は首を振った。
「言いたい事があるの、だからここに居て」

首を傾げ、モルディオの隣に立った。

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「お前は、のうのうと生きるタイプのようだな」
「そりゃどーも、過去を振り返ったって生まれるのは後悔だけだ
今更うだうだ言ったってどうにもならねぇだろ」

「私は…貴様のように簡単な生き方はしていない!!
貴様に私の立場が分かるような口ぶりをするな!」

「テメェ……!」

騒ぎを聞き付けたレイヴンは部屋に入って来た。

「ちょ、ちょっと!…何言い合ってんの!?」
ローウェルは私を見ずに、風のように出て行った。

「大将…?」
私は俯いた間々だった。



彼は私を救おうとしてくれた。
それは少しだけ、伝わった。

だが、私は 許せなかった。
私の半分しか生きていない者に

全てを、馬鹿にされたようで


罪は犯した
だが、全てが全て 悪い人生だとは思わない

「…………ッ…」








静まる辺り、灯はちらちら
市民街での噴水近くに腰を降ろした。

(大人気なかっただろうか、……だが…――――)




ぽん、と肩に手を置かれ 驚いて振り返るとレイヴンが居た。
「急に姿消さないで下さいよ…驚いちゃいました」

「――――――私は、」
「大将、分かってますって
青年もまだ、幼い部分があるんですよ」

肩を下げると、レイヴンは慌て出した。
それを手で制すれば彼は私をじっと見つめている。


「…私は…嫌だったんだ…否定されるのが…」


喜び、怒り、哀しみ、楽しみ

そして 罪


間違ったかもしれない
いや、間違っていたんだ

間違っていたけど
否定されると


「私が存在しない…いや、私は存在したいのだ…」
「大将…」


まだ、生きていたい




「アレクセイ!」

驚いて視線を当てればそこにはローウェル君が
眉を潜め、見つめた。

「……レイヴン、…席外してくんねぇか?」

「…分かった」

あっさりとレイヴンは引き下がり、下町へと向かって行った。
既に夜を迎えていて、市民街は静けさを増した。

しばらくの沈黙も続き、その空気に私は震えた。




「…ごめん、オレ……」
「良いんだ」

言葉を探る青年に向けて

「…良いんだ、十分だ」

私は立ち上がって、青年の頭を撫でた。

「ありがとう、」

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『おや、アレクセイさん 何を見ているんですか?』

『出陣した隊の名簿を見ているのだが』

『ほー…そういえばここの隊、失敗したらしいですよ
何でも、平民の奴らが役に立たなかったとかで
帰還者は無事、貴族だけだったみたいですよ』



次々に平民が見捨てられ、死んで行った。
なぜ、こうも貴族と平民は上手く協力出来ないのか

決して全員が全員 仲が悪い訳ではなかったが、騎士団では上司で居られるその心地良さ故に、タチの悪い貴族ばかりが溢れる


ある時、御前試合に抜粋された。
こんなふざけた世の中でも強い奴は居る

希望に応えようと、私は必死に戦い、優勝することが出来た。

そこから更に、本格的にこの世界を変えようと思った。
狭い環境下で、出来る事をして走り回った。


年月は過ぎて、ようやく平民からの兵をまともに入団させることが出来た。
今までは、使える戦力になれば良いと、無理矢理平民を兵にさせていた。

最も、戦力ではなく言い方を変えただけ
それは身替わりという盾なのだろう

しかし、問題はそれだけではなかった。
帝国でも、ギルドや魔物の間でも関係は良好ではなかった。


それでも何とか、私を中心に上手くやって来たのではないかと自画自賛した。
周りからも称賛され、私は今まで以上に頑張ろうと思った。

しかし、私には無いものを私の周りは皆持っていた。
それは本心で話し合える者が居ないということだ
知り合いは居たが、自身が多忙だった為に全く話す事すら出来なかった。

(私は……)

果して為になったのだろうか
私が犠牲になれば死後も心配せずに済むのか

そんなことはない

歯止めをする手立てはもうなかった。
私の中身は朽ちて、溶けていて、腐っていた。


気が付いたら周りは死んでいて、
更に気が付けば今度は私が死のうとしていて

(私なんて救いようがないのに……)

私だけが取り残され、孤独を歩む


浮遊する精神
原形が、ない




「アレクセイ」
「!」

驚いて視線を当てたら闇に塗れたローウェル君が居た。

「下らない事で悩んでたのか?」
「下らない……?」

腸が煮え繰り返る発言だ
私は目を細めた。

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