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何とも言えぬ雰囲気が漂っていた。
だが、私は不思議と重くは感じない

(恨まれ、憎まれて…それが正解だとは思わない
だが、償い方も分からないのなら、今こうして自分を追い詰める事しか…)



とりあえず宿に泊まる事にはなったが、生憎二人部屋で
レイヴンも少年も任せられないと思ったのか、ローウェルと同室だ

「先、風呂貰う」
その一言だけ
私も短く答えた。

左足を見れば血が固まっていた。
やはり自分の治癒術はあてにならない

強張る体が邪魔くさく感じた。
何か、硬い物が当たるかと思えば

「…そうか」

心臓魔導器
私の体にもあったのだったな



間違って、いたのか

間違って、いたのだ


毎回同じ思考

毎回同じ結果



「………っ…」

「お前…!」

「!?」

咄嗟に隠したが、遅かった

「……」

見られた

「……、ははっ…」

空笑い

「レイヴンと…一緒…?」

「…見なかった事にしてくれ」

彼から体を背けたがローウェルは私を組み敷いた。
「ッ、やめろ!!」

乱暴に服を開かれ、紅くて一番醜い魔導器が姿を現した。

「や、…めろ……」

「あんた、これ…どういう事だよ…?」

ローウェルの手が、震えている


「う…う、ぁ…あ゙あ゙ああぁぁあ!!!?」

「アレクセイ!?」


ダメだ

私は

私は


生きていてはいけない!

だって

だって


私は

大罪人


私さえ

死ねば


皆笑う

だから

私は


「アレクセイ!!」

狂ったような私にローウェルは抑えてくれている

だが、私が私じゃなくなっている



ローウェルは私を抑えるように強く抱きしめた。
そうしなければ私を止められないからだろう

しかし私は彼より体力もまだあるし、男性にしては軽い彼を突き飛ばした。
「ぐあぁっ!」
床にたたき付けられたローウェルは呻く

私は無我夢中になって操作盤を自ら開いた。
「!? やめろ!アレクセイ!!」
彼は私に飛び付き、転がった。


「……ローウェル君、私は…死を望まれているのだよ」
「ふざけんなよ…勝手に、死のうとすんじゃねぇよ…!」

私は目を細めた。
手を伸ばして髪に触れた。

「…もう少し、頑張りたかったものだが…」
「だったら、もっと堂々とすりゃいいじゃねぇか!
あんたは、そんなんでも第二の人生を貰ってんだぜ…!?
…きちんと、やることやってから諦めろ!
それならいくらだって、…あんたを助けるさ…」

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(だが、誤解を招いた行為をしたなら私が悪いな、彼女に謝りに行こう…)

私は立ち上がり、彼女の居るテントへと歩んだ。
だが、ふと 思い出された。


『お前がそこで謝罪に行って、嬉しく思うのか?』


彼女は、ヘルメスの娘だ
そしてあのクリティアの娘も

私がヘルメス式を悪に導く使い方をして、彼女らは怒っているだろうか
それよりも、聞いた話 モルディオは姫様とは親友関係にあると聞いた

親友…親友、か――――。

そしてまたローウェル一行は皆が親友なのであろう


私が謝ったところで、彼女らを激怒させる原因になるのではないか
仕方ない、と思って歩む足を止めた。


ならば、一生憎んでくれる方がいい
私がどれだけ酷い事をしたか、日々問われよう



「花、あったのだが…」
少年に花の束を渡せばそれを受け取ってくれた。
「…あの、さっきは…ごめん……」
若干俯く少年に、私は絶句した。
「…なぜ、謝る……」


私が謝りたい。
少年が憧れの視線を当てていたドン・ホワイトホースは、
私が殺ったのだ、私が殺したのだ

「少年、ドンを思い出せ 彼を殺したのは私だ」
そう言うと少年は驚いた視線を当てた。
「…君は私を憎め、一生…憎むべきなのだ」
私は頷き、少年から離れた。




花を依頼したのは匿名を希望していた。
依頼主が居るという場所に行けばそこには

「ハリー!?」
レイヴンがそう言った。
「よ、レイヴン」
その男は私を一瞬だけ見た。

「それよりも花は持って来たか?」
少年は頷き、はい、と束を手渡した。

「あ、ちょっといいか?」
ハリーという青年は少年と小声で話をし始めた。

「――…そうか、ありがとな」
ハリーは花の束の握る力を込めた。

それから、その花の束を私に投げ付けたのだ
慌て、私はそれを落ちぬよう受け取れば相手はなぜか満足したような笑み

「ちょ、ハリー!?」
レイヴンはそんなハリーの行動に驚いていた。
勿論、レイヴンだけではなく 他のメンバーも

「受け取れよ―――知ってるか?その花の意味」
彼は私を睨むような目で喋りかけてきた。



「別名、オトギリソウって言ってな
花言葉は恨み・敵意って意味なんだぜ」


そうなのか


「受け取れよ、お前が自ら詰んだ花をよ」


そうだな




私は彼と向き合った。

「…感謝する」

彼が握っていた力よりも、強く、花束を握った。

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様々な考えを忘れる為に花を探した。
(黄色の花はあるが…形が違うな……)
魔物に警戒しつつ、探しに歩く


(…魔物か?……っ!?)


魔物はモルディオの背後から迫っていた。
あの反応からして本人は気付いていない、助けなければ!

「モルディオ!!」
駄目だ、魔物が――――!!

私は全力で走って彼女を押し倒しつつ、剣で一閃した。

「な、な……やだ!!」

モルディオは私を押し退けて逃げ出した。


(…無事か……良かった、んだろうな…)

しかし、急に押し倒して悪かったと謝るべきだったか
彼女からしたら魔物はきっと見えなかったはずだ


(…仕方がないか……)

魔物が居たんだ
変な目的で押し倒した訳ではない


黄色の花を探していると、少し登った所にあった。
それを複数摘み、まとめて紐で縛った。

それからテントに戻ると、探し歩いていたのは私だけだった。
不思議に思い、皆の元へ寄るとこれまた酷い雰囲気だった。


「おい、アレクセイ リタがあんたに犯されそうになったって言ってたぞ」
他、少年とレイヴン、犬が私を見ていた。
テントの前はパティが居て、私すら見ない

「何の話だ、私は彼女を助けたつもりなのだが」
「リタの反応が尋常じゃねぇんだけど」

どう、誤解を解けば良いのだろうか

「私はそんなことしない、その時モルディオが魔物に気付いていなかったから彼女を守る為に偶然押し倒してしまっただけだ」

これは事実だ
私の言った事は間違っていない

「どうだろ…、証拠だってある訳じゃないし」

少年の言う通りだ
証拠なんかない

「埒あかねぇな…あ、ラピード
アレクセイから魔物の匂いするか嗅いでみてくれ」
そう言うとこの賢い犬は返事をし、私の様々な所を嗅ぎ始めた。

「ワウッ!ワウンッ」
何かを示すように犬は私の足元で騒ぐ
「何だ?」
ローウェルが近寄り、私の左足を掴んだ。
その途端、急に痛みが走った。
「……噛まれた痕だな」
血が出ていて、肌は紫色に染まっていた。

「え、」
レイヴンは慌てた様子で私に近寄って来た。
「気にするな、軽傷だ すぐ治せる」
無理に力を使おうとするレイヴンを退け、近くにあった木の椅子に座った。

膝を立て、精霊術と名乗られた力を使って治した。
武醒魔導器のような物はない為、中々慣れなかった。

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