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「ヤハクィザシュニナ」

干渉したからに他ならないのだが、この気持ちは何だろう
人間で例えるなら“恋”という言葉に近いようだ
それは人を愛で、ありふれた情を無条件に注ぐこと


「ヤ…ハクィ」

「や……」

「ヤハク……ィ」


何人消滅させたか分からない
なぜ、真道幸路朗にならないのか
なぜ、真道幸路朗になってくれないのか
なぜ、真道幸路朗でないのか
姿形はおろか、毛先も背骨も肋骨も爪も産毛も
何も間違ってはいない、完全で見事な存在を


「ヤハクィザシュニナ」
もやもやとした浮遊の中で、そうだと思い出した。
「もう一度」
ゲームのようなリセットを32回ほど続けて気がついた。
違和感があったのはこれだったのだ。

「ザシュニナ」
見つけた、私の求めていた“真道幸路朗”を
浮かんだ両手を伸ばし、頭から流れるように撫でて両頬に手を添えた。
「呼んで」
「ザシュニナ」

嬉しくなってしまった。これはまるで人間のようだと思わないか
浮ついた気持ちが心の中で満たされる。とても愛されている。
自分だけの、自分しか見ていない、よそには目もくれず、自分を
臨んだのは他ならぬ私、間違ったことは正さねばならないからだ

人類にとっての正解を
真道幸路朗の未来のためにも

なのに、どうして、埋まらないのか
パズルのピースのように当てはめても違っている
ピースは1つしかなく、当てはめるのも1つのみ

「……真道」
「どうしたザシュニナ」

不思議そうに私を見る真道、その栗色の瞳を私は見続けた。
薄かった気がする、濃かった気がする。どうだったであろうか

「真道、行こう」

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「雨も滴るいい男」

振り返ると傘を差した青い髪の男、ニーノが傘を差し出してきていた。
無言でそれを受け取るも、建物で雨を凌ぐその無駄さといったらない

「強くなってきたな」

粒が大きくなってきたらしく、跳ね返ってくるぐらいになっていた。
湿っているジーンのロングコート、後できちんと乾かさないといけないな
さっきから一言も彼は喋らない、けれども気分が悪いというわけでもなさそうだ

空を見つめる、だが降りるのは雨ばかり
しとしとから…ざあざあ、ざあざあ。音が大きい

「ジーン、」

声を掛けて、ようやく彼は俺を見てきた。
「悪い…ぼーっとしてた」
雨の音がそれを更に切なくさせた。



何かに悩んでいるオータスくん

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