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「アレクセイ、林檎食うか?」
部屋のドアが開かれた。
私は情けなくて手で顔を覆った。

泣く姿なんて、見られたくない
恥ずかしくて、馬鹿馬鹿しくて

「アレクセイ?」
反応しない私を不審に思ったローウェル君は近付いて来た。


「…傷が痛むのか?」
手を退けようとしたユーリをアレクセイは突き飛ばした。
派手にユーリは転げ、驚いた様子をしていた。
「何でも、ない…っ!」
ユーリは怪訝な表情をし、改めて近寄った。
「…何でもなくはねぇだろうよ」
怒られるかと思いきや、ユーリはいつもと代わらない対応だった。

「……話してみろよ、考え込んで尚更体調悪くされたら困るし…
何より、あんたもギルドの一員だ 助け合いってモンがあるだろ」
アレクセイはゆっくりと手を退けた。
ユーリはアレクセイの頬に手を添えた。

「……泣く事は恥じゃねぇと思うぜ
…アレクセイの言いたい事、何となく分かる」
そう言った後、ローウェル君は私の頭を抱いた。
普通は逆の立場だ、ということは置いといて
「…アレクセイ、……」
「す、まない…っ…もう少しだけ…、こうさせてはくれないか……?」
ローウェル君の体を抱きしめた。


「…おう、いいぜ……」



ただ無言でお互い抱きしめ合っていた。
下手に声を掛けるより効果的かもしれない

「…すまないな…色々、込み上げて来てしまって」
「いいって、困った時はお互い様っつうだろ?」
私はそれもそうだな、と同意した。

「あ、これ 食おうぜ」
彼が差し出したのは食べやすく切られた林檎
「いいのか?」
「あんたの為に切ったんだぜ?」
手に取って彼はあーん、と言ってきた。
「…口を開ければ良いのか?」
「それ以外何があるってんだ?」
苦笑したユーリにアレクセイはとりあえず口を開けた。

「うむ…美味しいな」
自然と笑ったアレクセイにユーリも笑った。
「あんた、笑ったな」
「…!…失礼な奴だな、私だって笑う」
そう言いつつもアレクセイはまた軽く笑った。


林檎小さく、食べやすくしてくれたユーリに感謝した。
この大きさなら戻すなんてこともない


「ありがとう、ローウェル君」
「気にすんなって じゃ、夕飯にまた来るぜ」
手をぷらぷらと振って、彼は部屋から出て行った。

「……林檎か…」
アレクセイは林檎をまた一つ、口に放り込んだ。

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