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一つの声が勇ましく広がる。
その声からして、若い男性の声だ

丁度、暇を持て余していた甘寧は、ひょいと覗いた。
(ありゃ…蜀の姜維じゃねぇか…)
愛用の槍を優雅に振るい、鍛練を行っていたのだった。
威勢の良い声が響き、そして一息ついたようだった。

「おや、甘寧殿ではございませんか
そんな遠くに隠れて、どうしました?」
汗を拭いつつ、姜維は少し離れた所で俺に向かって笑いかけた。
「お前…俺はお前の敵なんだぜ?」
近寄り、胡座をかいて座り込んだ。
「何を言うんです、あの始皇帝を打ち破る気持ちは同じでしょう?」
んー、確かにそうだな 俺は小さく頷くように呟いた。
それにしても、と 姜維は首を傾げた。
「甘寧殿が私に絡むとは何事でしょうか?私とは反りが合わないのでは?」
「何言ってんだお前、合う合わないじゃなくて喧嘩出来るかどうかだろ」
喧嘩ですか…、と苦笑しつつ姜維は甘寧からやや離れた辺りに両刃槍を置いて、自身も息を吐いて座った。
「…甘寧殿は、先程起きられたのですか?」
「まぁそうだな、ちょっとばかし酒を、な」
頬を掻くと、確かに酒の匂いがします、と零された。

「あぁ、そうだ」
俺は昨日の出来事を思い出し、姜維に向き直る。
実は敵武将を複数相手していたところを、姜維に助けてもらったのだった。
「昨日は悪かった けど助かったぜ、ありがとな」
「いえ、少し危険でしたが、甘寧殿があの時に討たなければまずかったでしょう」
褒められたものではありませんが、と 付け足されて俺のテンションがやや下がる。

「しっかし、暇だなー…これから何すっかな」
「それなら、しばらく経ったら私とお手合わせして下さい」
そりゃいいなと勢いよく立ち上がり、双鉤の一つを手元で軽く回してから歯を見せて笑った。
「そうとなったらやるしかねぇよな!ほら、さっさとやろうぜ!」
「ひ、人の話聞いてますか!?しばらく経ったらって…」
言葉が続く前に刃を喉に構えられ、俺はニタリと笑った。
「戦にはどんな状況でも立ち向かわなきゃならねぇ…分かってんだろ?」
「……やれやれ、まさかこんな…噂通りのお方です、ね!」
姜維は俺の胸元を押し、すぐさま槍を掴んで構えた。
押し出された俺だったが、即座に踏ん張って 緊張する心臓を楽しむ。

「本気で行かせて頂きます!」
「へっ、望むところだ!」

刃の交わる音が再び、多く響き始めた。

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