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「徐庶殿との手合わせ、とてもためになりました!」
礼儀正しく拱手し、嬉しそうに彼は言った。
そんな表情につられて俺も微笑んだ。

先程まで、俺は孔明の弟子である姜維殿と手合わせしていた。
発端は孔明からの頼みだった、俺自身も孔明の弟子はどんな子かと興味もあったのだが

「元直、見つけられましたか?」
「…?何をだい?」
羽扇を扇ぎながら孔明は俺の横をゆっくり通り過ぎた。
「彼の甘さです」
「姜維殿の?…それは俺より孔明の方が知っているんじゃないか?」
細い目がこちらを向いて、それからすっと閉じられた。
意味はあるのだろうが、どうにも読み取れなかった。

(彼の、甘さ……)

孔明が言うのだから何かあるのだろう
確かにまだ若く、戦では躊躇しないとは限らない


「隣、よろしいですか?」
顔を上げれば姜維殿の明るい表情が見えた。
どうぞ、と答えれば彼は嬉しそうに座った。
「丞相の御友人と手合わせ出来るなんて、私は幸せ者です」
「ええと…そんな、俺には荷が重いよ」
いいえ、彼は顔を横に振って俺を見据えた。
「“丞相だから”、というだけではございません
徐庶殿の剣捌きには目を見張りましたよ」

何だかむず痒くなることばかり言う彼に俺は苦笑した。
苦手ではないのだが、彼とはきっと気が合わないと思った。
否定したところで孔明の印象が強く、ベタ褒めされる気しかしない
それを聞いたところで嬉しくもなるが虚しくもなるのだ

しっかりした性格ではあるが、孔明に対する心服さが少々目立つ
それが悪いということではない、ただ偏りがどうも良くない
確かに孔明と姜維殿はお互い信頼を感じられる師弟だ
しかしまだまだ、考え方を改める必要はあるだろう

「姜維殿のやるべきことって、何だい?」
「丞相も目指す仁の世を実現したいです」

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