忍者ブログ
New
(10/18)
(10/18)
(10/18)
Search
[ 191 ] [ 192 ] [ 193 ] [ 194 ] [ 195 ] [ 196 ] [ 197 ] [ 198 ] [ 199 ] [ 200 ] [ 201 ]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

頭を左右に小さく振りながら、私は後退した。
「私は――――……すまない、無理だ…」
震える唇と、手、足が… 始祖の隷長は視線を外さない。

「アレクセイ」
ジュディスが駆け付け、私に近寄った。
「大丈夫、怖がらないで
今は警戒心が高まっているだけだから」
微笑み、誘導してくれた。



吹き抜ける風に、目を掠めた。
今度こそ、私は行かなければならない

自らの手の甲に、片手を重ねた。

(イエガー……)
彼女達にも、しっかりと伝えるべきなのだ

強く、唇を結んだ。




トリム港に着き、同行者として少年とレイヴン
それからローウェル君がついて来た。

「孤児院?」
少年が首を傾げたが、その応えは
「あんたら…」
ローウェル君が呟き、はっきりとした。

「貴方は――――」
赤髪の少女 ゴーシュは細く睨む
緑髪の少女 ドロワットは構えた


私は深く、頭を垂れた。
「…墓参りをさせてくれ」

「俺からも、頼むわ」
レイヴンはそう言い、同じくした。
ローウェル君と少年は無言で従ったようだ。


風が抜け、その時間は随分長かった気がする。
「…頼む」
推すように呟いた。


「…分かった、来ると良い」
ゴーシュは歩きだし、ドロワットは微笑んでから後に続いた。

「――――大将」

行きましょう、と レイヴンは微笑んだ。
私はそれに頷いた。





孤児院の向こう側に、ほっそりと、静かに立っていた。
墓石があり、“Yeager”と刻まれていた。
その周辺にはキルタンサスの花がそよいでいた。

「………っ」

唇を噛み、墓に近付いた。
(イエガー……)

私が原因で、死んだ一人
レイヴンと、同じ道だった一人

遠くで、私を見る彼女達を守るために
逃げられることを選ばなかったのは、
彼が死を選んだからなのか、それとも――――

墓の下にはあのイエガーが居る。
もう、見ることはないのだ


静かに黙祷を捧げた。






「すまなかった」
再び、彼女達に深く頭を下げた。
「それと…本当に、ありがとう……」
「また、来たい時は来ても良いよん」
ドロワットがそう言ってにこにこと笑った。
「……い、良いのか?」
彼女達は頷いた。

「……ありがとう」
私を、こんな私を受け入れてくれた彼女達に感謝した。


今度来る時は花を用意してやろう



キルタンサスの花と共に――――。

拍手[0回]

PR
彼女は机に足を荒く乗せ、拳銃を私の額にぴったりと付けた。
「引き金を引いたらどうなると思う?」

しっかりと重いその拳銃には幾多もの命があった。
蘇って来るようで、悪夢だった。


『ワタシノイノチヲカエセ――――』


私は一度瞳を閉ざし、改めて彼女を見た。
それから彼女の手に自らの手を添えた。

「――――引いてみたら良かろう」

そう告げれば、彼女は拳銃を落とした。
ガシャン、と 重い音が鈍く広がった。

「……分かっておった、うちはもう、決別したのじゃ…」
息を一つ、呑んだようだ
「お前を…“仲間”とは……呼べん」

彼女の手を握り、込めた。

「呼ばなくて、良いです
私は貴方に恨まれても良い程のことをしました
ですから私は、それを背負う義務がある
貴方に殺されても、仕方ないと思っています」

彼女の眼には、光が無かった。
「…う゛、うぅ…ッ!」
光は、溢れ出るために存在した。

彼女は、崩れた。

「……………」
彼女を、抱き留めて謝ることしか出来なかった。

愚かな自分を何度も、何度も咎めた。



中々夜は寝付けなかった。
(…繰り返される……)
今のメンバーからの気持ちのこもった言葉に

(ダメだ、休みたい………)

ベッドに寝転がれば、それは深く沈んだ。
久々な個室で、窓に白く覗く大きな月
構わず手を挙げ、空を何度も掴む


(……今なら)


行けるだろうか





朝日が顔を出し、起き上がる
「―――……行きたい所があるのだが」
自由に行動は取れても監視はされているわけで
「……どこへ行きたいんだ?」
どうやらローウェル君が来てくれるらしい

「…トリム港に」
そう言うと、ローウェル君は眉を潜めた。
その様子を見ていたレイヴンは
「なら、俺も行きたいかな」
と、言い出した。
「うちも行くぞ」

「なら、皆で行った方が良いんじゃないかしら」
ジュディスがそう言い、皆賛成した。




始祖の隷長 その名はバウル
「さぁ、乗ってちょうだい」
ジュディスがそう言ったが

「――――……」

始祖の隷長を見て、立ち止まった。
遠くから、何度か見たことはあっても、こんな間近に見たことはなかった。
そしてまた、この始祖の隷長も私がどんな存在かは知っているはずで

「…ヴォオオ」

その始祖の隷長は唸った。
私を、読み取れない眼で見る。

(……、……見るな…っ)

靴が砂利と擦れた。

拍手[0回]

「ギルドの仕事、しばらくは休みを取る事にしたよ」
少年が急にそんなことを言いはじめた。

「あら、どうして?」
ジュディスが眉を潜め、首を傾げた。
「最近ギルドの仕事ばかりだったでしょ
少しくらい休みを取るのも必要だからさ」
「やるなぁ、カロル先生」
ローウェル君がうんうんと頷いた。

「リタとパティはどうする?」
「あたしは一緒で良いわ、まだ特に掴めてないし」
モルディオは即座にそう言った。
「うちも…まだ居たいのぅ」


皆それぞれに別れ、憩いを求めに行った。


私は金髪の少女を見た。
「……話があるのだが」
少女は止まって、そして頷いた。
「いつじゃ」
「出来れば、今」
一つ瞬きし、少女は再び頷いた。
「移動、しようかの」






「居ても立っても居られないってか?」
アレクセイとパティの行く方向をレイヴンは見ていた。
そんな様子のレイヴンをオレは見ていた。
「ユーリ…」
まぁ座れよ、と 促し、お互いに座った。

「パティちゃんは…失礼だけど、何だかんだで最年長なわけだしね
気持ちの整理だったり、どう生きるのかはもう分かってると思う
…それでも、やっぱ大将のことは許せないだろうし…」
次々と口にして行く
「…まぁな…、そりゃアレクセイだって分かってるだろ
それをオレ達が支えて、アレクセイを導いてやるべきじゃねぇのか?」
そうなんだけど、と どこか腑に落ちない表情のレイヴン

「…それと、ごめん アレクセイの心臓のこと…
もっとレイヴンに早く言うべきだった」
「ううん、別に気にしなくて良いんよ」
レイヴンは一つ苦笑した。

「俺、今はアレクセイが心配なんだわ…」
碧の瞳は、暗がりを増していた。
「―――――オレだって、心配だ…
でも、アレクセイは一つ一つ向き合わなきゃならねぇ
それはアレクセイ自身がやらなきゃいけないことだ」
自分に呼び掛けるように、オレは言った。
「……そうだわな、ちゃんと…見守ってやらなきゃ」
レイヴンは一つ頷き、力を抜いた。






小部屋入り、“彼女”とは対にある椅子に座った。
彼女は、大きい目を 細めた。
「……私が」
私から、切り出した。
「私が貴方に出来ることはないだろうか…」
やや俯き、彼女を見つめた。
「―――――……そうじゃの…」

拍手[0回]


Copyright © Labyrinth All Rights Reserved.
Powered by Ninjya Blog 
忍者ブログ [PR]