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頭を左右に小さく振りながら、私は後退した。
「私は――――……すまない、無理だ…」
震える唇と、手、足が… 始祖の隷長は視線を外さない。

「アレクセイ」
ジュディスが駆け付け、私に近寄った。
「大丈夫、怖がらないで
今は警戒心が高まっているだけだから」
微笑み、誘導してくれた。



吹き抜ける風に、目を掠めた。
今度こそ、私は行かなければならない

自らの手の甲に、片手を重ねた。

(イエガー……)
彼女達にも、しっかりと伝えるべきなのだ

強く、唇を結んだ。




トリム港に着き、同行者として少年とレイヴン
それからローウェル君がついて来た。

「孤児院?」
少年が首を傾げたが、その応えは
「あんたら…」
ローウェル君が呟き、はっきりとした。

「貴方は――――」
赤髪の少女 ゴーシュは細く睨む
緑髪の少女 ドロワットは構えた


私は深く、頭を垂れた。
「…墓参りをさせてくれ」

「俺からも、頼むわ」
レイヴンはそう言い、同じくした。
ローウェル君と少年は無言で従ったようだ。


風が抜け、その時間は随分長かった気がする。
「…頼む」
推すように呟いた。


「…分かった、来ると良い」
ゴーシュは歩きだし、ドロワットは微笑んでから後に続いた。

「――――大将」

行きましょう、と レイヴンは微笑んだ。
私はそれに頷いた。





孤児院の向こう側に、ほっそりと、静かに立っていた。
墓石があり、“Yeager”と刻まれていた。
その周辺にはキルタンサスの花がそよいでいた。

「………っ」

唇を噛み、墓に近付いた。
(イエガー……)

私が原因で、死んだ一人
レイヴンと、同じ道だった一人

遠くで、私を見る彼女達を守るために
逃げられることを選ばなかったのは、
彼が死を選んだからなのか、それとも――――

墓の下にはあのイエガーが居る。
もう、見ることはないのだ


静かに黙祷を捧げた。






「すまなかった」
再び、彼女達に深く頭を下げた。
「それと…本当に、ありがとう……」
「また、来たい時は来ても良いよん」
ドロワットがそう言ってにこにこと笑った。
「……い、良いのか?」
彼女達は頷いた。

「……ありがとう」
私を、こんな私を受け入れてくれた彼女達に感謝した。


今度来る時は花を用意してやろう



キルタンサスの花と共に――――。

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