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「この人達はだぁれ?」
可愛いリボンを付けた少女はレイヴンと私に視線を向けた。
「こっちはユーリの仲間のレイヴンだよ」
「おっ、よく覚えててくれたわな」
レイヴンは笑い、少年を撫でた。
「シュヴァーンって名前の隊長さんだったんだよね?」
「そうねぇ、今は時々しか手伝えてないけど」

あぁ、シュヴァーンは確か ここらの下町をよく巡回していたな、と思い出した。

そう考えを巡らせていれば、服がぐいぐいと引っ張られた。
何かと思って振り向けば、少女が泣きそうな顔をしていた。
ローウェル君やレイヴンを見たが、二人共 他の子供に気を取られているようだった。

「……何だね?」
しゃがみ込み、少女の背丈に合わせた。
「あれ、風船……うぅっ」
指で示された場所を見れば、風船が木に引っ掛かっているようだ
私の身長なら簡単に取れる位置だ
少女に私は頷き、立ち上がろうとした時だった。

「!」

気がついた時にはもう間に合わなかった。
花瓶が、私に勢いよく投げられていた。
考える暇さえなく、少女を直ぐさま抱き寄せて庇うように身を縮めた。

その後、綺麗な音が響いた。


目を開け、少女を解放してやった。
「怪我はないかね…?」
「うん、……え、怪我してるよ!?ねぇ、ユーリ!!」
呼ばれなくても、ローウェル君は私に駆け寄っていた。

「アレクセイ、ちょっと来い!」
手を強引に引かれ、途中で女将に会った。
それから寝かされ、レイヴンも入り込んで来た。
「レイヴン、出来るだけの治療を頼む!ラピード!」
「ワウッ!」


直に花瓶の衝撃を受け、頭から血が流れていた。
何だか意識もよく分からない、視界も気持ち悪い

「ねぇ、治るの!?治るのっ!?」
この声は、あの少女の声か
はっきりしない視界で少女の姿を捉えた。

「…お嬢さん、私は…大丈夫だ……」
薄く笑えば少女は目に涙を溜めた。
「嫌だ!死なないで!やだ!!」
ひし、と 私の腕に力強く抱き着いた。
最後に覚えているのはそこまでだった。








「ん、ぅ……っ………?」
「大将…?目が覚めましたか…?」
視線を向ければレイヴンが心配そうにしていた。
「…あぁ、もう大丈夫…うっ…」
「まだ動かないで下さい、血が足りなくてすぐに貧血起こしますよ」
その言葉に頷き、再び横になった。

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レイヴンも、彼が救ったのだろうか

「…私は、君が羨ましいよ 私は、親友なんて以っての外
友達すら出来ない…可哀相な人間、とよく言われたものだ…」
「なら―――オレがあんたの友達だ
そりゃすぐにはなれねぇけどな、オレだって無理だ」

でも、と 彼は繋げた

「…段々と、なっていけばいいじゃねぇか」
「…魔導器があったから、哀れんでそう言ってくれているのか?」
「それもあるかもな……オレはあんたと似てる部分がある
だから、単純にあんたには死んで欲しくないだけだ」


罪を償って欲しいからな

と、彼は言った。


「…宜しく、頼む……私も、もう少しだけ…努力しよう……」

「あぁ」




心臓魔導器で同情されたのは悔しいが、
知らないより知ってもらった方が良い

先程の行動は当初よりも自殺願望が強くなっていた事を表していた。
私だって、罪を償いたいと思っていたのに


だけど、私には 友達が出来た
若い彼にそんなことを言ってもらえるとは思わなかった。

私の年齢で友達なんておかしいかもしれないが、
純粋に、嬉しかった。



「アレクセイ、魔導器のことはまた後で教えてくれ」

「…分かった」




「次の依頼はザーフィアス?」
モルディオの言葉に少年は頷いた。
「…というか、騎士団からって言った方がいいのかな」
「え!?帝国とギルドってまだそんなに仲良い訳じゃ…」
「意外とそうでもないみたい、協力的らしいわ」

へえぇ、と レイヴンが呟く
それでね、と 少年は続けた。

「たくさんあるみたい 片付けとか、魔物退治とか」
「専門だな?」
ローウェル君がクリティアの娘に振ると、あらあら と、彼女は首を傾げた。

「でも久々にエステルやフレンにも会えるかもしれないのじゃ~」
にっこりと少女が笑えば モルディオはそ、そうね と呟いた。

「なあ、ちょっと自由行動とらねぇか?久々の帝都だし、下町にも寄りてぇんだ」
「うん、急ぎじゃないからいいよ じゃあそこの宿で」
少年も多少疲れた様子でそう言った。
モルディオと少女もそれに頷き、宿へと向かって行った。

「アレクセイとおっさん、ちょっと来いよ」
にこにことローウェル君は笑いながら肩に手を回して来た。


「ただいま!」
ローウェル君が下町にある宿に入ってそう言うと、数人の子供が振り返った。
「あ!ユーリじゃん!ねぇ、ユーリが帰って来たよ!」
気がつけばローウェル君の周りには子供ばかりだった。

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何とも言えぬ雰囲気が漂っていた。
だが、私は不思議と重くは感じない

(恨まれ、憎まれて…それが正解だとは思わない
だが、償い方も分からないのなら、今こうして自分を追い詰める事しか…)



とりあえず宿に泊まる事にはなったが、生憎二人部屋で
レイヴンも少年も任せられないと思ったのか、ローウェルと同室だ

「先、風呂貰う」
その一言だけ
私も短く答えた。

左足を見れば血が固まっていた。
やはり自分の治癒術はあてにならない

強張る体が邪魔くさく感じた。
何か、硬い物が当たるかと思えば

「…そうか」

心臓魔導器
私の体にもあったのだったな



間違って、いたのか

間違って、いたのだ


毎回同じ思考

毎回同じ結果



「………っ…」

「お前…!」

「!?」

咄嗟に隠したが、遅かった

「……」

見られた

「……、ははっ…」

空笑い

「レイヴンと…一緒…?」

「…見なかった事にしてくれ」

彼から体を背けたがローウェルは私を組み敷いた。
「ッ、やめろ!!」

乱暴に服を開かれ、紅くて一番醜い魔導器が姿を現した。

「や、…めろ……」

「あんた、これ…どういう事だよ…?」

ローウェルの手が、震えている


「う…う、ぁ…あ゙あ゙ああぁぁあ!!!?」

「アレクセイ!?」


ダメだ

私は

私は


生きていてはいけない!

だって

だって


私は

大罪人


私さえ

死ねば


皆笑う

だから

私は


「アレクセイ!!」

狂ったような私にローウェルは抑えてくれている

だが、私が私じゃなくなっている



ローウェルは私を抑えるように強く抱きしめた。
そうしなければ私を止められないからだろう

しかし私は彼より体力もまだあるし、男性にしては軽い彼を突き飛ばした。
「ぐあぁっ!」
床にたたき付けられたローウェルは呻く

私は無我夢中になって操作盤を自ら開いた。
「!? やめろ!アレクセイ!!」
彼は私に飛び付き、転がった。


「……ローウェル君、私は…死を望まれているのだよ」
「ふざけんなよ…勝手に、死のうとすんじゃねぇよ…!」

私は目を細めた。
手を伸ばして髪に触れた。

「…もう少し、頑張りたかったものだが…」
「だったら、もっと堂々とすりゃいいじゃねぇか!
あんたは、そんなんでも第二の人生を貰ってんだぜ…!?
…きちんと、やることやってから諦めろ!
それならいくらだって、…あんたを助けるさ…」

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