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ずっと、ずっと

不安だった、けれど

まだ出るべきではない

それは内側からひび割れ

そして無残な形となる

綺麗だけれど、醜い

巣立ちはいつか、むしろ

出来るのだろうか

予感はある





それは鳴いていた、片翼が真っ赤に染まっていた。
体を震わせ、付近には情の破片が散らばっていた。


「どうしたんだい」


初めてかける言葉だった、それでも震えは止まらなかった。
静かに近寄り、真っ赤になった翼に包帯を巻いた。
ただそうするだけ、未だにどうしたらよいか分からないからだ

長い、長い時間をかけて背を撫でてやる。
それしか出来ない、時に無力を感じる。


「たえられませんでした」


ようやく口にしたのがそれだった。
やはり素直だった、小難しく考え過ぎた。

心当たりならある、なぜなら無関係ではないからだ
気持ちは同じだった、そこで破片を三つ零した。


「かわりにつばさになるよ」


そう伝えれば更に破片を二つ転がした、一体どれだけの負担を抱えて来たというのか
己の不甲斐なさは知っていたけれど、こうなるまで放置させていたとは

少しずつ破片を集め、それを寄せてやる。
徐々にそれは形となり、溶けていくまで見届けた。


「ただいま、かえりました」

「おかえり、つぎはともに」

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しばらく沈黙が続いた、そういえば彼とこうして喋ることは初めてに近いかもしれない
立場上仕方ないが、ほとんどの相手からは苦手か謙遜な雰囲気が出ている。
しかし彼は良い意味で私に遠慮しないし、ぶつかる時はぶつかって来る。
私がこんな形で褒めることになろうとは、だが納得している自分も居た。
不思議と不快の一言では済まない気持ちがあった。
彼に対する何かが完全に変わって来ていた、だが素直に認めるのも何となく嫌である。

と、いきなり隣に居た彼がこちらに横たわって来た。
何かと驚いて見れば、見た目とは裏腹に意外と静かな寝息が確認出来た。
寝ている、彼は狸寝入りをする性格ではないだろうし例えしたとしてもすぐに見抜ける。

私ですらあなたに疑心暗鬼だというのに、あなたは私にそれを抱いているのだろうか
あなたに対する態度はどう見ても他より違って、感づけば嫌われていると捉えるだろう
それをなぜ、簡単に迎え入れてしまうのかがどうも分からない

膝は仮面のゴツゴツした感じが痛いし、つい溜息が出る。
それでも拒否しない私も私だ、どうしてと問われても…私が知りたいくらいです。





翌日、私は軽い風邪を引いてしまった。
間違いなく酒宴で長く風に当たったのが原因だろう
そこまで重くならなかったのが幸いだ、伝染病なら命を落としかねない

昼頃には月英や姜維、馬岱殿などちょっとした見舞いをしに来てくれた。
それだけで満足だったはずなのに、何かが足りないと首を捻る。
考え始めたそばから荒々しく誰かが入って来た。
肩で息をしながら急接近され、さすがに怪訝な表情を浮かべた。
それは紛れも無く、魏延殿であった。

「我…オ前ニ…無理サセタ……スマン」
頭を垂れる彼、予想もしなかった出来事に私は目を大きくして瞬きをした。
「無駄話…シタ」
彼が示す無駄話というのは星についての話題だろう
あんまりに落ち込む姿を見て、思わず軽く笑ってしまった。
それを疑問に思って彼は顔を上げていた、全くこの方は面白いというか何というか

「気にしなくてよろしいです、私としては得した気分ですからね」
更に疑問の色を強めた、それがまた面白かった。
今まで彼から距離を置いていたが少し近寄ってみるのも悪くない、そう感じた。

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「今日モ劉備ノ星…見エル」
夜空を見上げて男は呟いた、私は彼と付き合いづらかったが蜀の貴重な戦力であったために外せなかった。
何より不仲とはいえ信頼や交流がなければ裏切りを働き、最悪の事態を招くことさえある。
その日は酒宴があり皆程々に酔っていた、そしてたまたま彼が近くに居て聞こえた言葉がそれだった。

「酔っているのですか」
声をかければ彼は唸った、そういえば酒に強いのか弱いのか知らない
「我…アマリ飲マナイ」
「意外ですね、あなたなら猛獣の如く飲みそうだと思ったのですが違いましたか」
毎度少し嫌みを入れるのだが、彼はあまりそういうのを気にしない
私としては面倒もなく、敢えて言い返されないところを狙って言っているというのもあったが

「ところで劉備殿の星、というのは一体何ですか?」
悪く言うが、彼は星を眺めたりするような人物ではない
「アレ…劉備ノ星」
単純に一番光る大きな星を示すかと思えば、正直劉備殿らしい星とはいえない星を指差した。
一つかと思えばアレモ、といくつもの同じくらいの星を挙げていった。
「何を根拠にそんなことを…」
「劉備ニトッテ…民…一番……多ク支エル為ニ劉備…タクサン居ル」
つまり一番光る大きな星は民だと言いたいのだろう

「…居ナクナッテモ…オ前ガ劉備ノヨウニ…人…照ラス」
「勝手に劉備殿を亡くすような真似はやめてください」
「スマン……」

彼はきっと劉備殿が語った星の話を私にも知ってほしかったのだろう
素直に聞けない私も私だが、このようにつんけんするのは魏延殿だけだった。
そう考えると尚更頭が痛くなる、私は一体何がしたいのか

「オ前ノ星…アレ」
指差す先を見れば少々大きめの赤い星だった。
「なぜですか?」
「情熱…溢レテル…策カラ感ジル」
彼は少し満足げ笑んでいた、何が嬉しいのかは不明だが気にしないでおく
「…大きな青い星、と示さなかったことに評価はします」
やや冷えた夜風だったが、酒を飲んでいた為か逆に心地好かった。

じっと見られる視線を感じて何ですか、と短く伝えた。
「…近ク…寄ッテイイカ?」
「ええ…構いませんが」
断る理由はない、何されるか分からないので懐刀を忍ばせてはいたが
隣に気配を感じ、やがてそれは胡座をかいて座った。

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