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遅い、遅い遅い

予定より十分は早く着いた。
だが、相手は予定の時間どころか一時間は過ぎている。

こんなに時間にルーズだとは思わなかった。
いや、むしろプライベートだからか?

思考を巡らせても一向に分かるわけがない
ユリウスのように付き合いが長かったら分かるのだろうか
といっても、ユリウスとリドウの仲は良いとは言い難いが

(すっぽかされたかな……)
グラスも、もう空だ 氷が澄んで見えている。
追加しようか悩んだが、どうも来る気配はなさそうだ
連絡ぐらいしろよな、と思いつつ溜息をついて立ち上がった。

バーからしばらく行ったところで人だかりが出来ていた。
何かの小さいイベントか?と思ったら…見覚えのある姿が
中心に立つ男は紛れも無く、リドウだった。
ヤツは呑気にファンクラブの女を相手にしてやがった。
しばらく見ていたが、変わる様子もないようなのでその場を去った。


トリグラフの広場へ行き、ベンチに座った。
(は~ぁ…なんであんな男を好きになったんだろうな)
しかもあのリドウだ、正体を知らない女だったらさぞ嬉しかろう
付き合いはまだ浅いが、以前の間々なら一蹴されていたことだろう

恐らく、似ていたのだ
一年程前の俺と同じく誰も信じず、頼らず、見せずにいた
見た目だけ大人になって、置いていかれる心

俺はそれを見過ごすことが出来なかった
むしろ、見過ごしてはいけないと思った

本当の意味での独りを知っているからこそ、出来る範囲で手助けしてやりたい
彼は特に、見てやらなければならないと そう感じたのだ

(…まぁいいか……)
彼にとって、それが癒されることなら出る幕はないのかもしれない

思考を巡らせ、少々酔いながらも心地好い風に当たりながらも自然に身を委ねていると、
「ぐおっ!?」
軽く、なのだろうがまるでえぐられるかのような殴りを頭部に受けて目を開いた。
目の前には少々機嫌の悪そうなリドウが立っていた。
「こんなところで何を呑気にやってんだ」
苛立つような仕草に俺は思わず肩を竦めてしまった。
「おいおい、俺が悪くなっちゃうワケ?」
「約束の場所に呼んだクセに来ないなんて言語道断だね」
やれやれと思いながらも場所を移そう、ということになった。

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