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「で、なぜお前の部屋なんだ」
明らかに不満そうな声が後ろから掛かる。
広場から自宅までグチグチと言われてはこちらも腹の虫が収まらない
「そもそもお前な、約束した時間から一時間は経ってんだぞ?」
リドウに悪びれた様子はない、呆れた。
「仕方がないだろう、ファンは大事にしないと…ね?」
ね?じゃねぇ、とも言いたかったがどうも反省しないみたいだ
元が捻くれているし、中々直せるものでもない
無論、それは俺にもいえることだ

「はー…もういいよ、もういい」
敵対しているわけではない(と思いたい)ので好きにしろ、と言ってソファーへ横になった。

暗闇の中で理想を描くが、やはり簡単には行かないものだ
俺だって、まだ分からない


しばらくしたところでふと目が覚めた。
するとリドウは床で寝ていた。
普段の疲れでだらし無くなるのは分からないこともないが、彼が床で寝ることに違和感を持った。
関わり始めたばかりで彼をよく知らないからというのが一番なのだが、と思ったところでハッとする。

(……これが、お前か)
まるでうずくまるかのようにして寝ているリドウに近寄った。
それからリドウを抱き上げ、自分が使用しているベッドへと寝かせた。

(……ちっとは自惚れていいのかねぇ)
酒をグラスに注ぎ、夜景をぼうっと眺める。
深夜も列車は止まることなく動き続けている。
光も、まるで星の数ほどあるために一つ消えても気にならない
(明日も休みみたいだし、俺も寝るか…)
少々早い時間だが、あまり問題はないだろう
残った酒を飲み干してから再びソファーに転がり、夢に沈んだ。


朝を知らせる柔らかい光が差し込んで来た。
せっかくの休日だし、起きたくないと思ったが大事なお客様がいる。
起き上がり、さすがに起きて何かしているかと思いながらも自室行けば彼はまだ寝ていた。
起こすのも何なので、軽く水分を摂取しながらふと彼を見る。
かなり深い眠りのようで、彼のまぶたが簡単に開くことはなさそうだ

大人、だというのにどこと無く幼さを抱く
見た目ではない、印象なのか… いや、雰囲気だ

彼の頬に甲で静かに触れた、更に髪にも指で絡める。
愛しさを感じずにはいられなかった、彼をもっと幸せにしたい
道は難解であろうが、共に歩めたらそれ以上の喜びはない

軽く頬に接吻し、寝顔をやや堪能してから俺はキッチンに立った。
さてと、逃げられる前に足止めになる朝食を作らねば、と俺は意気込んだ。

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