忍者ブログ
New
(10/18)
(10/18)
(10/18)
Search
[ 616 ] [ 640 ] [ 639 ] [ 638 ] [ 637 ] [ 636 ] [ 635 ] [ 634 ] [ 633 ] [ 632 ] [ 631 ]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

これはとある宿屋での出来事だった。
業魔というよりはロクロウのことが俺には分からん、一体何を考えていやがるんだ


「なあ、ところで聖隷って───」
そうロクロウがふと言いかけた所で彼は口を閉じた。
やはりやめておこうと彼は呟いて踵を返したが、待て待てと俺は肩を強めに掴んだ。
「そこまで言っておいて言わないってのはどうなんだ、あ?」
「お前は借金の取り立て屋かよ」
「取り立ててもいないしさっさと続きを話せ」
「それは断る。殴られるがオチだからな」
余計気になるように言い残している。明らかに俺が気になって仕方がないのを分かってて言ってやがる。
「殴……らない保証はないな、内容によるとしか言えん」
「殴られる可能性が高そうなら言わなくて正解だろう?」
このループ、ロクロウは少しニヤニヤしながらその場を離れようとするがそうはいくか
「………分かった。殴らんから言え、怪し過ぎる」
「失礼だな、俺はただアイゼンの自慰行為を見てみたかっただけだ」
拳を顔面へ入れる前に寸前で止められた。明らかに怒りを隠さない俺にロクロウは肩を竦めた。
「ほら!やっぱり殴ってきやがった」
「当たり前だ!殴らせろ!!」
相当騒がしかったのか、部屋にライフィセットが急いで入って来た。
ロクロウのいいところに来た、と言わんばかりの表情に一瞬隙が出来た。
「どうしたの!?……だ、大丈夫?」
「お、ライフィセット!実はアイんふごぉ」
「バカか!お前はバカか!!」
すぐさまロクロウの口を上から塞ぎ、無理矢理引き摺って行く
聖隷術を無駄遣いしながら鎖を上手いこと繋いで外まで出て行く

「ぶはっ……やめろよな〜 息が出来なくなるところだったぞ」
口をへの字にしているが足首の鎖だけは解いてやらない、絶対に解いてやらない
「ライフィセットに何を言おうしていたかは知らねえが、殴らなかったことを褒めてくれてもいいぞ」
「応、ありがたい!」
何なんだこのテンションは、と膝から崩れ落ちる。大丈夫かー?と前から聞こえるがお前のせいだ
先程の内容を聞きたくもないが、それでは何の為に外へ出たのかということになる。
ここはあくまで平常心を持って、話を聞くだけ聞いてやれば収まるかもしれない
「……ちなみに、なぜ見たいという発想になったんだ。お前は“斬る”ことにしか興味ないんじゃないのか」
「確かにそうだが業魔とはいえ元々人間だ。聖隷のこともよく知らないし、分からん物事に興味を持つのは人間の性だ。ま、業魔だけどな」
分かった分かった、と呆れながら腕を組んだ。純粋なのかそうでないのかイマイチ把握出来ない、人間の成人男性が仲間内に居ないために正しい思考の在り方がどうにも分からん
というより他人の己を慰める姿を見たいか?とまず疑問に思うわけであって、見ようとしたがる思考がそもそも理解出来ない
人間は興味本位でそうも見たくなるものなのか?本来人間そのものへの興味が無いわけでもない俺は唸った。

「ライフィセットには頼めないだろ?ならアイゼンに言うしかないだろ」
さも当然かのように胸を張るロクロウに頭が痛くなった。
「お前……さっき何か言い掛けてたのは何だったんだ」
「ん?ああ言えば阻止してくるだろ?で、アイゼンはやらざるを得なくなる」
期待がこもった満面の笑みに俺は思わず白目を剥いた。


とにかく、だ。ロクロウからその件から興味を反らすため、今夜は心水を飲もうと持ち掛けた。
しばらくはこの街にいるようだし、嗜む程度ならばベルベットやエレノアに咎められることもないだろう
それに俺自身も単に飲みたかったというのもあるし、多少は息抜きもしておきたいところだ
待ち合わせの時刻になり、夜の街を歩いて酒場へ向かう。店主に確認したが、まだロクロウは来ていないようだった。
先に一杯ひっかけたところで待たせたな、という声が掛かる。
「遅いぞ」
「悪い悪い、ちょっと話し込んでた」
ロクロウの盃に心水を注ぎ、飲むように催促する。
「応」
彼は俺が持っていたグラスと盃で軽く音を鳴らした。その高い音で俺達の夜は始まる。
くいっと彼が飲んだあとに俺もそれに続き、心水が嚥下していく独特な心地良さを味わう
「やっぱりうまいな、いつ飲んでもたまらん」
「だな、こんな状況じゃなけりゃもっと飲みたいところだ」
もう一口、回数を重ねて心水の量は増えていく。会話をせずとも、言葉を交わしているような気分になれる相手はとても気が楽だ
「あー……もうダメかもしれん」
やや朱く染まったロクロウの頬を見て俺は喉で軽く笑った。
「そこそこ飲んじまったからな、お前は水に切り替えるか?俺はまだ追加するから頼まれてくれ」
分かった、と彼は立ち上がって水を貰いに行った。残り僅かな心水をグラスに注ぎ、小さく残っていた氷は次第に溶けて消えた。

拍手[0回]

PR
Comment
Name
Title
Font Color
Mail
URL
Comment
Password

Copyright © Labyrinth All Rights Reserved.
Powered by Ninjya Blog 
忍者ブログ [PR]