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「…あまりこういうのは言いたくないけれど、怪我して良かったんじゃないかしら」
ジュディスは小麦粉を手に取ってそう言った。
「ふむ…つまり、アレクセイが休みを取れる そう言いたいのじゃな?」
「ええ、彼 休んだ方がいいわ 色々と、ね」
パティはそうじゃの、とにっこり笑ってチョコを溶かしていた。

「はて、さっぱりだわ…」
珍しく肩を落としながら悩むレイヴンにカロルは近寄った。
「どうしたの?」
「あの…ほら、大将に……」
不安そうなレイヴンの表情に、カロルは笑った。
「多分、レイヴンの作る物なら アレクセイは何でも喜ぶと思うよ」
「……そっかな…」
カロルは深く頷いた。それから耳打ちし、クッキーがいいよ と伝えられた。
「え?」
「今は、それが流行ってるんだって 持ち運べるし、甘いし美味しいし!」
クッキーねぇ~、とレイヴンは顎を掻いてからカロルは微笑んだ
あの人のことだ、久々にそういうのも悪くなさそうだ

「」

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『エステル、リタ!危ないっ!!』
気付いたカロルが叫んだ、しかし今彼女らを守る術はない
前衛にいたユーリやフレンは、間に合いそうにない

『せいっ!』
彼女らに襲い掛かろうとした魔物数体に向かってアレクセイは剣を投げたのだ
剣は魔物をえぐり、悲鳴を上げた。
アレクセイは走り、エステルをユーリに リタをフレンにと放り投げた。

『大将ッ!』
レイヴンが矢を放ったが、間に合わない!
多少の犠牲も受け入れるつもりのアレクセイは魔術を放った。
しかし発動までには間に合わず、魔物は死ぬ間際にアレクセイの足や腕など数ヶ所に怪我を負わせた。

『うろたえるな!まだ魔物はいるぞ!』
慌てて近寄ろうとしたエステルやフレンであったが、アレクセイはそれをやめさせた。
メンバーは、あのアレクセイが という表情だ
だからこそフレンですら駆け寄ろうとしたのだ




「ごめんなさい、アレクセイ」
「…ごめんなさい……」
エステルは眉をひそめ、肩を落としていた。
横にいたリタは唇を噛み、やや下を向いていた。
「私、どこかでまだ油断していたと思います…」
「エステリーゼ様…お気持ちはお察しします……」
アレクセイはエステルに笑い掛けた。
「…あんた、」
「モルディオ君、お願い事がある」
急な要求にリタは怪訝な表情を浮かべた。
「私は、デザート的な物が食べたい」
「……な…なんだって?」
そんな発言にリタが微妙な答えをした途端にエステルは勢いよく立ち上がった。
「デザートですね!?分かりました、アレクセイが早く良くなるためにもデザートを作りましょう!さあ、行きましょうリタ!」
「え、あ、あたあた…あたし!?」
引きずられるようにリタはエステルに連れていかれた。

「……わふっ」
それまでずっと静かに伏せていたラピードが立ち上がった。
「…ふむ、君もいたか」
尻尾をふりんと一度振った。
「私の為に休みを取らせてしまうからな…早く立ち直さねばならぬ」
「わうっ、ワン!」

一つ、睨まれた。

「…そうか、ありがとう」
ラピードを撫でれば、少し口端を上げて尻尾を振った。


(やれやれ、オレに出来ないことを…)
(さすがだね、ラピード)

戻って来たラピードに二人は一本取られた、というように肩を竦めた。

「さてと、僕達もやらなくてはね」
「無茶してでも働いてもらうしな」
「ユーリは素直じゃないね」
「ん?何の話だ」

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華麗に、無駄のない攻撃を繰り出すアレクセイに誰もが惚れ惚れしていた。
「……君達、私ばかり見て何を…?」

「だ、誰もあんたなんか見てないわっ」
「そうじゃそうじゃ!」
なんやかんやで野次られているアレクセイも、また愛おしい
「アレクセイって…ほんとに素敵です……」
「そうね…私も燃えて来ちゃうわ」
女性陣に囲まれているアレクセイも、また愛おしい
「ボク…アレクセイに憧れるな……」
「僕もその一人だ、誰もが見惚れてしまうよ」
憧れの的として崇められるアレクセイも、また愛おしい
「ま、やっぱり嫌いはなれねぇよな…」
「そりゃそうよ、大将のことだもんね」
最終的に皆に外せない存在であるアレクセイも、また愛おしい

そんな中、唯一軽々と近寄れる存在
「わうっ」

ラピードがアレクセイの元へと駆け寄った。
それからアレクセイにしゃがむよう吠えた。
アレクセイは何となくそれを読み取り、膝をついた。
皆が、何をするんだろうと見ていると

「私の顔に何か……?」

ラピードは軽くアレクセイの口元をキスし、それから舐め始めた。

「ん、むっ…うあぁっ……な、舐めっ」
じれったそうなアレクセイの表情に、ラピードは尻尾を振って更に舐めて行く。

さすがにそれを傍観していた皆は焦り始めた。
そして満場一致でラピードにファーストキス(かどうかは不明)を取られた!と思っていた。

そしてまた全員が全員、ライバル視し始めるのだった。



「アレクセイ!」
パティの声がし、バタバタ何か来ていると思ったら背中に引っ付いて来たのだ
「な、何だねっ」
驚いて顔を後ろに向けるが、見えるはずもない
実をいえば、フルールとは関わりづらいのだ
しかしフルールはそれを分かった上での行動なのだろう
「お前にうちの銃に関する知識を教えてやろうと思うての」
「あ!パティだけに良い思いはさせないよっ」
気が付けばカペルまでもが私の足に引っ付いていた。
「ボクだって、アレクセイに色々教えてもらうんだから」
ワイワイと騒いでいる子供ら(ということにしておく)に苦笑しつつも武器屋へと向かった。

入った武器屋には多種多様あり、中には珍しい物もあった。
(これは……)
キャナリやダミュロンが使用していた弓があったのだ(複製の物ではあるが)
そんな私に気づいたカペルは弓を取って、アレクセイに差し出した。
「アレクセイも使えるんだよね?詳しい話聞かせて」
「ほう…使ってみるのじゃ」
レイヴンほどは手慣れていないが、操作の仕方や使い方は知っていたので 弓から一気に短刀に成り代わった。
「あ、レイヴンが一瞬でするヤツ!」
「これは是非とも受け継がせたいものじゃの」
「そう、だな」

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