忍者ブログ
New
(10/18)
(10/18)
(10/18)
Search
[ 1 ] [ 2 ] [ 3 ] [ 4 ] [ 5 ] [ 6 ] [ 7 ] [ 8 ] [ 9 ]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

アルベルは、困っていた。

どこぞの童話にある、マッチを売る少女のような事態に遭遇したからだ
とはいっても少女ではなく少年

場所はペターニ、交易がよくされているこの場所でとある出来事が起きた。
「美爪になれますよ」
少年は俺に向かってそう言った、大抵の人間は俺を避ける。
良い人柄に見えないからか、話掛けられることは少ない
見る限り服の裾などが所々破けていたが、どこからか摘んで来た花をアクセサリーにして貧相な印象を弱くしていた。
初めは何なんだこの餓鬼はと無視していたのだが、あまりに纏わり付くためにやむを得ず足を止めた。

「今流行りのネイルアートなんですけどっ」
「爪なんざ興味ねぇよ、大体そういう話は女相手にするもんだろうが」

呆れながらそう言ったが、少年はほぼ聞いていない様子でカゴから何か探していた。
「じゃ、じゃあ!お兄さん、好きな人は居ないんですか?」
すぐに思い浮かんだのは朱い髪に紫色の瞳で黒装束の隠密だった。
覗き込む少年、脳裏にちらつく好きな女、俺は溜息をついた。

「…居たら、何だってんだ」
「その人にプレゼント、あげてみませんか?」
道端で少年は準備よく何かを並べ初めた。
怪訝な表情で見ていると、並べられたのは様々な色のマニキュアだった。
目に留まったのは、彼女に似合う朱い鮮やかな色だった。
視線に気付いた少年は、赤のマニキュアを手にした。
そのあたりを見てはいたが、まさか一度で見抜かれるとは
「買って頂けますか…?」
説明をしていた時とは打って変わって急に神妙な面持ちになり、思わず眉をひそめた。
「……仕方ねぇな、買ってやる」
「わぁあ!ありがとうございます!!」
「黙れクソ虫、あまり騒ぐんじゃねぇ!」
こんなところを仲間に見られてはならない、恥ずかしいでは済まなさそうだからだ

包装されたマニキュアを俺は受け取り、少年は辞儀をして足早に去って行った。
しかし買ったはいいが、いつ渡せばよいのか
いきなり渡したとして、どう思われるやら
下手に中身を見られ、変な趣味があると思われても困る。

仲間であるフェイトやクリフのような性格だったらどんなに楽なことか
彼女とは少し隔たりを感じている俺の立場からすればある意味羨ましい

拍手[0回]

PR
「こんな歳にもなって…甘えたいだなんて、恥ずかしいよ」
両親からの愛はたくさん貰ったのだろう、それでもこの女は内側を見せようとはしない
だからこそ、今になって幼少時代貰えずにいた何かを取り戻そうとしているのかもしれない
「別に、悪かねぇよ…」

己を未熟な存在と、強く感じたあの日
人と深く関わることを、やめたあの日

拍手[0回]

彼女の腕にある包帯は、少しだけ赤く染まっていた。
止血はしたみたいだが、膿んでしまっているらしい
更に毒を持っていた魔物らしく、相当苦労した治療だったようだ
それでも彼女は痛そうな表情は見せず、痛むかどうかを聞くまでも無かった。

「もしかして…怒っているのかい?」
申し訳なさそうにしていた彼女は、少しやつれたような気がする。
元々が細かっただけに、心配しない訳がなかった。
「怒っちゃいねぇが、当たりだな」
当たりなら怒ってるんじゃないか、と呟いていたが聞かないことにする。

「なぜ俺にすぐ、このことを言わなかった?」
そう言うと、彼女はうろたえた。
「……余計な心配掛けさせて、負担になるのが、」
溜息をついたが、俺はそれだけに留めた。
彼女は目を逸らし、気まずそうにしていた。
「正直に言った事に対しては褒めてやるけどな、」
俺が何を言いたいのか、この様子は分かっているようだった。
「…ナメるな、好きな女一人を守れないようなら男は要らないんだよ」
「ち、違うんだ…!」
彼女は顔を左右に振った、寂しそうな雰囲気が漂っていた。

「そのっ……あ、あま…」
聞こえなくなっていく言葉に、俺は眉をひそめた。
「あ……あの…笑わない?」
頷き、急かしても仕方ないので次の言葉を待つ
彼女は口をつぐんでいたが、軽く息を吐いて俺の方に顔を向けた。
「あの、……た、頼り、方とか……分からなくて…」
彼女が寂しそうに見えた理由が分かったような気がした。
大人の女ではない、まるで少女のような思考と言葉だった。

「人を信じるって、難しいよ…公的なものとはまた別に、こう…個人的な……
な、なんか…ごめんよ。弱気になっちゃったみたいだ、気にしな―――っ!?」
彼女の傷に触れぬよう強く抱きしめ、それから頭をゆっくりと撫でてやる。
左手で撫でた時のぬくもりが、何だかとても幸せに感じた。
そう、この左手でも彼女を感じる事が出来るのだと
「甘え方に迷う、か?」
こくりと、弱っている彼女は小さく頷いた。
「き、聞こえてたんじゃないかっ…」
そうして少し恥ずかしがりながらも彼女は呟いた。
「馬鹿にしたりなんかしねぇよ、今の俺ならな」
昔の間々であったなら特別好意もなかったし、敵国の厄介な女としか思ってなかっただろう
だが今は、何者にも代え難い大事な女なのだ

拍手[0回]


Copyright © Labyrinth All Rights Reserved.
Powered by Ninjya Blog 
忍者ブログ [PR]