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魔物に噛まれた後、すぐに撃退させることが出来て良かった。
部下も無事だったようだ、そう思って自ら施術をかけようと思った時だった。
いきなり吐血し、私は何が何だか分からなかった。
訳も分からず口を抑えて、痛む腕を抱えながら横に倒れてしまったのは覚えている。
まるで毒を飲んでしまったかのような、段々と気持ち悪くなる感覚になりながら意識を手放した記憶がある。

一度、目が覚めた時はクレアが泣きそうな顔をしていた。
『ネル…!ネルっ』
普段取り乱すことのない彼女だが、私のためにこうまでして感情的になってくれることは嬉しかった。
と同時に、虚無感がなかった訳ではなかった。
己の甘さについて省みようと思ったが、押し潰される気がしてやめた。

そして今が二度目の目覚めになる。食事を取って、気分的に落ち着き始めた時だった。
「クレア・ラーズバードよ、入るわね」
ノックの後にはその言葉が聞こえ、扉が開かれた。
「クレア!お久しぶりだね」
「本当にね、心配したわよ」
手を軽く握られ、その体温にホッとした。
「それでね、会わせたい人が居るの」
「この状況で…かい?随分無茶を言――――」
扉の前にはあの男、アルベルが立っていた。
とにかく私は目を見張り、すぐに反応することが出来なかった。
「な…んで、あんたが……」
ようやく出た言葉がこれだった。
驚かない訳がなかった、お互い国に直接関与する立場だからだ
安易に会えるはずもなく、だからといって手紙を送り合うこともしなかったのだ。

クレアは微笑みながら部屋から出て行ってしまった。
だがそれよりも彼がなぜ此処に居るのか、簡単に来られるものではないだろう
「……ごちゃごちゃ言うな、どうせ余計な事でも考えてたんだろ」
「よ、余計な事って…!あんたねぇ!」
彼に口元を手で塞がれ、私は険しい表情になる。
「騒ぐな、安静にしてろ」
怒らせたのは誰だ、と思いながらも口を閉じた。

「俺の意志で此処に来た」
唐突に彼はそう言ったが、その言葉だけで十分理解出来た。
私は自分なりに精一杯の気持ちを込めて彼の手を握った。
顔は見られなかったけれど、更に強く握って
「…ありがとう」
彼も私の手を握り、更にもう片方の手で私の甲に手を添えた。
手甲を外した手、包帯で巻かれたそれは僅かな体温を伝えて来た。

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「私からの約束は、すぐにネルの元へは行かないこと」
「…会うなってことか?ふざけたこと言ってるとテメェでも斬るぞ」
私は最後までちゃんと聞いて、と言いながら睨んだ。
ふて腐れているが、後頭部を掻くだけに終わる。
「大怪我を負っているの」
「アイツが…!?」
ガタッと勢いよく立ち上がったが、私の約束を思い出したようで何ともいえない表情で座り直した。
一気に紅茶を飲み干し、音を立ててカップを置いた。
「ネルに会うのはもう少しだけ待っててほしいの、その間は此処に居て構わないから」
と伝え、何とか彼に落ち着いてもらうことにした。

「ところで…本当の目的は別にあるのでしょう?」
「……ねぇよ」
その低く呟かれた一言に私は驚いた。
てっきり国からの伝達などでこちらに来ていて、ネルに対してかこけていると思っていたのだが
「本当に、ないの?」
「二度も言わせるな」
そっぽを向き、彼はソファーへ横になった。
ということは、ネルに会うためだけに来たということになる。
彼とは長く居たわけではないが、あの長旅から少しは丸くなったのかもしれない

「怒らないでほしいんだけど、聞いてもいいかしら」
「怒らせるような質問か、嫌な予感しかしねぇな」
反射して聞こえる声は篭っていた、しかし私は何だか嬉しかった。
「あなたはネルのこと、好きなの?」
率直に聞くと、彼は起き上がって私を横目で見て来た。
「…………ああ」
悩んだような様子が見られたが、素直に真実を語ってくれたようだ
それは私が彼女にとってかけがえのない親友だと聞いていたからだろうか
「そう、安心したわ」
微笑むと、彼は怪訝な表情を見せた。
「何だかんだでお互いがお互いを上手くサポート出来ているからよ」
軽く鼻で笑われたが、視線を逸らすように窓際を見た。
素直じゃないな、と思ったがそれはネルも同じだった。

そんな時、失礼しますという声と共にノックがされた。
私はどうぞ、と返事をして入らせた。
アルベルを見て目を見張ったが、私に向き直った。
「ネル様が目を覚まされました」
「ありがとう、すぐ行くわ」
部下が下がり、彼はソファーから立ち上がった。
「さて、行きましょう」
目が合い、軽く頷いてから彼と共にネルの元へ向かった。

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あれから双方の国は、難題を抱えつつも今のところは上手く行っていた。
戦もない、そう考えるだけで腕が鈍ってしまいそうだ
だがいざという時に対応出来ないなんてのは通じないわけであって
そのため、最近は獲物を狩って来るというのが日常である。
最も、執務もしなければならないために毎日ということはないが

机上に足を組んで暖炉を見つめた、そこからパチリと音が響く
そういえばと火を眺め、アルベル・ノックスは連想させたものを思い出す。
思い立つと即座に準備をし、適当に挨拶してから出発した。






シーハーツの一部では、深い悲しみが渦巻いていた。
任務中、ネル・ゼルファーが負傷した。
状況は部下が詠唱中、後ろから魔物が近づいていることに気付いていなかった。
いち早く気付いたネルは部下を突き飛ばしたのだが、一歩遅かったようで腕を噛まれてしまったのだ。
容態は安定し始めたのだが、いつまたぶり返すかは分からない為に慎重でもあった。

この辺りの魔物ならば慣れた施術で対応出来たが、魔物も弱肉強食という状況に置かれている。
そのため未確認な生物や動物が様々な発展をし、新たな魔物として生息し始めるのだ。


溜まってしまっている書類を机に運び、椅子に座って筆を持った。
そうして書類に目を通し、名前を書こうとした時だった。
やたら外が騒がしくなっているのに気付いた、クレア・ラーズバードが立ち上がったその時
荒々しく扉は開かれ、久々に見る相手に目を瞬いた。
「おい、アイツはどこだ」
私の知り合いでこんなに騒々しいことをする人間は一人しか知らない
「まずは紅茶でも飲みませんか、アルベルさん」
いらねぇよ、とあからさまに不機嫌そうな顔をしていた。
「煎れますから、座っていて下さい」
彼の言葉を無視し、カップにコトコトと注いで行く
それから彼の前にあるテーブルに置いてから向かい合ってから座った。

「で、どこに居やがる」
「ネルは今、休んでいるわ」
彼にとって、いつも居そうな場所に彼女が居なかったことに不安を抱いているようだった。
「場所はどこだ」
「言えません」
そう言うと更に鋭い目つきになった、私は顔を左右に振った。
「約束を守ってくれるなら言います」
私も負けじと相手を見つめた、彼は息を吐いてから分かったと答えた。

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