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彼女の腕にある包帯は、少しだけ赤く染まっていた。
止血はしたみたいだが、膿んでしまっているらしい
更に毒を持っていた魔物らしく、相当苦労した治療だったようだ
それでも彼女は痛そうな表情は見せず、痛むかどうかを聞くまでも無かった。

「もしかして…怒っているのかい?」
申し訳なさそうにしていた彼女は、少しやつれたような気がする。
元々が細かっただけに、心配しない訳がなかった。
「怒っちゃいねぇが、当たりだな」
当たりなら怒ってるんじゃないか、と呟いていたが聞かないことにする。

「なぜ俺にすぐ、このことを言わなかった?」
そう言うと、彼女はうろたえた。
「……余計な心配掛けさせて、負担になるのが、」
溜息をついたが、俺はそれだけに留めた。
彼女は目を逸らし、気まずそうにしていた。
「正直に言った事に対しては褒めてやるけどな、」
俺が何を言いたいのか、この様子は分かっているようだった。
「…ナメるな、好きな女一人を守れないようなら男は要らないんだよ」
「ち、違うんだ…!」
彼女は顔を左右に振った、寂しそうな雰囲気が漂っていた。

「そのっ……あ、あま…」
聞こえなくなっていく言葉に、俺は眉をひそめた。
「あ……あの…笑わない?」
頷き、急かしても仕方ないので次の言葉を待つ
彼女は口をつぐんでいたが、軽く息を吐いて俺の方に顔を向けた。
「あの、……た、頼り、方とか……分からなくて…」
彼女が寂しそうに見えた理由が分かったような気がした。
大人の女ではない、まるで少女のような思考と言葉だった。

「人を信じるって、難しいよ…公的なものとはまた別に、こう…個人的な……
な、なんか…ごめんよ。弱気になっちゃったみたいだ、気にしな―――っ!?」
彼女の傷に触れぬよう強く抱きしめ、それから頭をゆっくりと撫でてやる。
左手で撫でた時のぬくもりが、何だかとても幸せに感じた。
そう、この左手でも彼女を感じる事が出来るのだと
「甘え方に迷う、か?」
こくりと、弱っている彼女は小さく頷いた。
「き、聞こえてたんじゃないかっ…」
そうして少し恥ずかしがりながらも彼女は呟いた。
「馬鹿にしたりなんかしねぇよ、今の俺ならな」
昔の間々であったなら特別好意もなかったし、敵国の厄介な女としか思ってなかっただろう
だが今は、何者にも代え難い大事な女なのだ

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