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アルベルは、困っていた。

どこぞの童話にある、マッチを売る少女のような事態に遭遇したからだ
とはいっても少女ではなく少年

場所はペターニ、交易がよくされているこの場所でとある出来事が起きた。
「美爪になれますよ」
少年は俺に向かってそう言った、大抵の人間は俺を避ける。
良い人柄に見えないからか、話掛けられることは少ない
見る限り服の裾などが所々破けていたが、どこからか摘んで来た花をアクセサリーにして貧相な印象を弱くしていた。
初めは何なんだこの餓鬼はと無視していたのだが、あまりに纏わり付くためにやむを得ず足を止めた。

「今流行りのネイルアートなんですけどっ」
「爪なんざ興味ねぇよ、大体そういう話は女相手にするもんだろうが」

呆れながらそう言ったが、少年はほぼ聞いていない様子でカゴから何か探していた。
「じゃ、じゃあ!お兄さん、好きな人は居ないんですか?」
すぐに思い浮かんだのは朱い髪に紫色の瞳で黒装束の隠密だった。
覗き込む少年、脳裏にちらつく好きな女、俺は溜息をついた。

「…居たら、何だってんだ」
「その人にプレゼント、あげてみませんか?」
道端で少年は準備よく何かを並べ初めた。
怪訝な表情で見ていると、並べられたのは様々な色のマニキュアだった。
目に留まったのは、彼女に似合う朱い鮮やかな色だった。
視線に気付いた少年は、赤のマニキュアを手にした。
そのあたりを見てはいたが、まさか一度で見抜かれるとは
「買って頂けますか…?」
説明をしていた時とは打って変わって急に神妙な面持ちになり、思わず眉をひそめた。
「……仕方ねぇな、買ってやる」
「わぁあ!ありがとうございます!!」
「黙れクソ虫、あまり騒ぐんじゃねぇ!」
こんなところを仲間に見られてはならない、恥ずかしいでは済まなさそうだからだ

包装されたマニキュアを俺は受け取り、少年は辞儀をして足早に去って行った。
しかし買ったはいいが、いつ渡せばよいのか
いきなり渡したとして、どう思われるやら
下手に中身を見られ、変な趣味があると思われても困る。

仲間であるフェイトやクリフのような性格だったらどんなに楽なことか
彼女とは少し隔たりを感じている俺の立場からすればある意味羨ましい

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