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「今、レイヴンの心臓がオレの心臓になってる…」
そんな気がするんだ、とユーリは言った。
レイヴンも、不思議と同意が出来た。

「オレ、レイヴンが幸せだと嬉しいんだ
だから、レイヴンの心臓と…オレの心臓が代わるならたやすいモンだって」
「ユーリ…!」
「レイヴンはもう、無理しなくていい…痛みは分け合う方がいい」
彼の細い身体は、更に細く見えた。
「ユーリ!」

今更後悔した。
楽になりたい、この痛みさえなければ
心臓の事なんてどうでも良かった。

犠牲を無くすことなんて出来ない
成功には犠牲があるからこそなのだから


「ユー、リ…」


どうしてそんな事を願ってしまったのか
ユーリが不幸だと、俺は幸せにはなれない
なのに、自分が犠牲になればいいのか

そんなの、レイヴンは許さなかった

「ユーリ、それは間違ってんのよ」
疑問の視線を投げ掛けられた。
「それはユーリの考えた幸せかもしれないけど…俺はそれじゃ不幸なの」
顔をしかめたユーリを、レイヴンは頭を撫でた。

「今まで、で…いいのよ」
心臓の戒めは自分だけで良い
「嫌だ」
「…ユーリ…」
「そんな考えのレイヴンも嫌だ」
ユーリは俯いた。


しばらくの沈黙が漂った。


「…レイヴンは凄いんだな、心臓の負担…今分かるけど、
同じ心臓でも、やっぱり本物とは違うんだなって…」
心臓魔導器がなけりゃ、レイヴンは色々凄いんだな、とユーリは言った。
「……ユーリ、もういい…」
レイヴンはユーリの顔を抱きしめた。
「ユーリ、勘違いしないでちょうだい
その心臓は俺にあってこそなんだわ
確かに、辛いし痛いし…苦しいモンだけど…
それでも、このユーリの本当の心臓は貰えないから…」

「ぐっ…あ゙ぁ゙っ!?」
急にユーリが呻き始めた。
「ユーリ!?」
胸を強く掴むユーリをレイヴンはどうすることも出来なかった、が
「…ゔっ…あぁあ゙あ゙っ…!」
今度はレイヴンが呻く番だった。
「レイヴン!」
「だ、だいじょ…ぶ……はっ、はっ…」

心臓が、代わった。

「レイヴン…」
レイヴンは大丈夫、と何度か呟いた。

「ユーリ、ありがとね」
「…何でだ…?」
微笑んだレイヴンはユーリの胸に触れた。
「俺の幸せ、願ってくれて…」
「なら、オレもサンキュ」
今度はユーリがレイヴンの胸に触れた。
「レイヴンの心臓の重さ、分かったから」
お互いはお互いを今まで以上に大切にしようと思った。

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