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ふーっ……と息を吐き出す。これを嗜み始めてどのくらい経ったか、よく覚えていない
指で挟んでいるものは先端から煙を出し、静かに燃えている。風が緩く流れると煙も同じように乗り、同時に灰も飛んでいった。
もう一度、とそれを咥えようとした時に影が生まれて別の柔らかさを生んだ。
私の手ごと掴み、それを取られたかと思えば握り潰された。
「……私の愉しみを奪わないでもらえるかな」
へし曲がって床に落ちたそれを眺めてから顔を上げると再び交わされた。
「っく……」
「人の話を聞かないと次はないよ」
首にそっと糸をしのばせ、絞め上げることなど私にとって朝飯前だ。全く、ことごとく私のやることを遮る悪魔の考えが私には分からない

フードから覗くギラリとした緑の目が笑う。参ったぜ、とか言っておきながら反省の色は見えない。
「仕方ねえだろ?お前が俺をそうさせてんだからな」
「何でも私のせいにしないでくれよ」
はあ、とため息をつきながら目当ての物へと手を伸ばすがそれは彼の鋭い爪の付いた手によって遮られた。
ころころとそれは転がって地面にいくつか散らばった。
「そんなもん吸うんじゃねえよ」
明らかに不機嫌で、それを隠そうともしない。それはいつものことだし私は気にならないが、この悪魔はすぐに喧嘩をおっ始める存在だからなぁと私の思考は呑気だった。

「馬鹿にする前に君も一度吸ってみたらどうだい?そうすれば私の気持ちが分かるかもね」
そう告げると彼はむ、と興味があるような表情に変わる。でも臭いはそんなに好きじゃなかった、と彼は眉を顰めながら転がり落ちたそれを拾った。
「火を起こすから、ほら、咥えて」
渋々口に咥え、火を先端に付けるがなかなか灯らない。咥えながら軽く吸って、と伝えると彼は不思議そうに従った。
そうして火は付いたが、咥えるだけで何もしない彼に私は思わず笑ってしまった。
「何してるの、吸わないと」
「……?」
「口の中に煙がたまったら、それを吐き出すんだよ」
それを口から離し、はあ〜っと吐き出している。まるで獣のような、ドラゴンが炎を吐き出すようなイメージだ。

「……不味い」
「本当に?私はこの銘柄、好きなんだけどな…そもそも合う合わないがあるし、無理に吸うようなものじゃないけどね」
でもそれなら勿体ないから貰うよ、と苦そうな表情をしている悪魔から受け取った。
「俺には分かんねえな、それの良さが……ただ、馬鹿にするのはやめる」
「そう?ならこの行為には価値があったってもんだ」
とはいえ、私自身も気分転換かつ思い出したら吸っているようなものだしそこまで吸う方ではない
いつもと違うのは、この悪魔からの妨害から興味を引くことが出来たというところだ

じ、と視線を感じるが私は気にしない。これもいつものこと、吸って吐いての繰り返しを彼は飽きずに見てくる。
「……やっぱり腹が立つな」
「…あ」
ぱし、と手をはたかれそれは軽く飛んだ。行方を目で追っている間に影が出来てまた塞がれる。
「っ、……!」
がちゃり、ケースと砂利が擦れる音がした。深いそれに思わず私は呼吸を忘れ、彼をなんとか押し出した。
「っはぁ…!ッ……死ぬ、かと思った…」
「おいおい、今更それはないだろ」
キスされて、呼吸を忘れるなんて。いや、私は嗜んでいたからこそ呼吸が…… なんて言い訳をしたい
「あと、おいしくないからやめろ、それ」
「はあ?断るよ」

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