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掴めば届く距離、そういった場面に直面した時にどう行動したら正解なのだろうか
以前の俺ならそれも死神の呪いだと受け止め、構わず選んだだろう

地図を眺めて嬉しそうに説明する少年のライフィセットと、顎に手を添えて頷く青年のロクロウが確認出来る。
そしてそれを後ろから覗き込むダイルの姿もある。
それらを見て、ガラにもなく物思いにふけちまってる自分自身にため息をつきながら舵を取る。
今回は異海の領域までは行かずとも、その近くでまた釣りをしたいとライフィセットがお願いしてきた。
きちんとベルベットの許可も得た上での航海だ、もちろんライフィセットの強い要望で彼女は船に乗っていない
他の女性陣もサレトーマを飲むのは勘弁してほしいと、そもそも今はサレトーマの在庫もないためその方が懸命ではあるが
(男だけってのも、久々かもしれねえな)
バンエルティア号はベンウィックに任せてある。ベルベット達に何かあればシルフモドキが飛んでくるだろう


『グリモワール』
古文書を眺めていた彼女に声を掛けた。周囲には誰もおらず、俺にとって都合は良かった。
『あら珍しい、何かしら?』
『聞いたことあれば教えてもらいたいことがある。“浄化の指輪”というのを耳にしたことはあるか?』
そうねえ…と彼女は静かに呟き、本をぱたんと閉じた。視線を感じるが、そこに勘繰るような意図は感じられない
『あるにはあるけれど……あたしもその逸話には詳しくないの、それに作り話だって説が1番信じられているくらいあやふやなものなのよ』
『それは…俺も聞いている。ただ、もしあるなら』

最初で最後でいい。あるのなら一度だけ使ってみたいと思った。
その“浄化の指輪”とは、迷信と言い切れてしまうくらい情報が少なかった。逸話や作り話と片付けられてしまうのがいつものことだった。
過去に別の海賊から聞いた話では業魔が綺麗になるだのと意味不明なことを言っていた。
またある商人からの話では業魔に触れるだの、雲をつかむような話ばかりしか聞いたことがない

『ふぅ……そうね…その指輪は紅いんじゃないかしら。まるで緋の夜に浮かぶ月のように紅いと聞いたことがあるわね』
グリモワールが知っているくらいなのだからもしかして実在するのかもしれない、しかし当然手にしたなどという話は聞いたこともない
不必要な内容であるなら彼女も覚えておくことすらしなかっただろう。だからこそ彼女の情報は有り難いものだった。
『そうか……参考にさせてもらう』
『どういたしまして』


元々ダメ元で探しに来ているようなものだ。淡い期待を抱きつつ、あれば良かった程度だと胸に秘めた。
「この周辺が異海の領域付近になる。釣り竿はそこにまとめてあるから好きに使ってくれ」
「うん、ありがとう」
ライフィセットは釣り竿を手に取り、早速準備に取り掛かっていた。
それに続いてロクロウも餌を用意し、今度こそはと意気込んでいる。
とはいえ俺が居るだけでまともな物は釣れない可能性が高そうだが、そこは黙っておいた。
「…あ!ロクロウ、引いてるよ!」
「おっと、負けられん!」
グイグイと引っ張るロクロウに、横でダイルがたも網をいつの間にか持って待ち構えていた。
「っ…おお、待っ……!」
「ロクロウ!」
遠くで見ていたが、慌てている3人の様子に俺も近付いた。
「どうした?」
「うおお、やべえやべえ!!でけえぞ!」
逆に引き摺られているロクロウとそれを阻止するために彼の腰を固定するダイル、隣にはダイルからたも網を預けられたライフィセットが焦っていた。
一瞬変な感情が混ざって困惑したが、気のせいだと思い込んで海を覗いた。
底には黒い影が広く見える。業魔ではなさそうだが竿も大きくしなっており、存在感は圧倒的だった。
手を貸そうとしたがこの拒否感と虚無感は何なんだ。俺は、悔しがっているのか?
「アイゼン!お願い…!僕じゃ力不足どころか足を引っ張っちゃうっ」
ダイルも踏ん張ってはいるものの、彼すら引き摺られ掛けていた。
「……すっ飛ぶんじゃねえぞ!」
しなる竿と船を鎖で繋ぎ、段々とそれは姿を見せてきた。
「た……宝箱…?」
ライフィセットが怪訝そうに呟くと同時に、宝箱は勢いよく甲板に転がり落ちた。派手な音をさせた割に床は一切傷付いていなかった。
ヘトヘトになったダイルは床にあぐらをかいており、ロクロウは釣れた勢いで折れた竿を見て呆然としていた。

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