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「言っただろ?俺が“嫉妬”から生まれた怪物だってことを」
禍々しい見た目の彼に俺は苦い表情をしていた。身なりでそのような感情を得たわけではない、自らの立ち位置からそれはきていた。
単なる日常会話をしていただけだったのだがどうしてこうなったか、思考を巡らせたが分からないままだ
簡単に言えば俺はその怪物に馬乗りされていた。敵意は感じられないが、だからといってこの状態が好ましいかといえばそうではない

「何をしている」

単純な質問を投げ掛けた。至ってシンプルな疑問
緑の目を持つ怪物はにやりと笑い鋭く尖った白い歯を見せてきた。そして前のめりになって顔が近づいた。
「お前、髪長いクセに男前だな」
「……質問に答えろ、それと髪の長さで性別を判断するな」
それもそうかと彼は再びにやついた。何がおかしいのか、難しい男だ
「悪い、嫉妬すると見境なくてな」
「何の話だ、それに髪なんて貴様でも伸び…ぐっ……!?」
ぐぐ、と髪を引っ張られた。痛みというよりは驚きの方が大きかった。
「ジュリエットに、だ」
「は…?」
理解が及ばないままでいると、掴まれた髪を軽く体に叩きつけられた。
「理解しろ、俺はジュリエットに嫉妬したんだ」
「……なぜ、貴様がジュリエットに嫉妬する」
愚問だな、と怪物は呟いた。そもそも、この男の“嫉妬”はどこからどこまでなのか。視線は角から顔へと流れて鎖骨をなぞり、胸そして腹を見終えて緑の瞳が絡んだ。
「醜いだろ?俺はそんな俺を忘れたくて嫉妬して嫉妬して得られないのに喰らってまた嫉妬する」
その怪物は楽しそうに言った。そんな状態に驚いた、それはきっと終わらないことを指していたからである。

(それなら俺達も一緒だ)

己の運命を悪魔によって狂わされ、皮肉にも悪魔の力を得た俺は悪魔狩りをしている状態だった。それにジュリエットも賛成し、癒えない片翼をお互いで埋め合っていた。
そんな時、さまよっていたオセローと出会い意気投合。彼は悪魔のような身なりだが俺と同じく人生狂わされたのだろう、だから殺めることはしなかった。
そもそも彼は強かった。ジュリエットと本気で仕留めれば殺すことは可能だっただろうが、ジュリエットも何かを察してオセローに同行を願い出たのだった。
彼との旅は悪くなかった。オセローは時にジュリエットを護り、俺との連携も上手く合わせて悪魔を撃退させていた。
そして休息を挟んだ時だった、俺が馬乗りされているのが現状である。

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残されたままの忘れじの面影亭に行くと、その手前でいい匂いがした。とうとうラージュの腹も触発されたらしく、派手に鳴っていた。

「オレもうお腹ペコペコだ、早く行こうぜ」
こくりと頷き、扉を開けると再び私のお腹も小さく鳴った。それと同時にエプロンを着けたアムが首を傾げていた。
「あれ?もう来ちゃったの?」
「さすがにもう我慢できなくてさ」
そうなの?でもいいわよ、とアムは微笑みながらキッチンへ向かった。既に並べられている料理は見慣れたものばかりだ、ライやフェアが作っていた物と同じ
おそらく残してくれていたレシピを参考にしたのだろう、今思い出しても2人の出した料理は文句のつけようがなかった。

「お待たせ、ライやフェアみたいな出来じゃないけど頑張って作ってみたの」
彼女なりの努力が感じられた。食べる物、食べる事が出来ること自体が素晴らしいことだと思う
「よし、いただきます!」
早速ラージュはサラダを取り分け、それにドレッシングをかけていた。酸っぱいけれど、食欲をそそる匂いがする。
「いただきます」
私はからあげを何個か皿に乗せ、近くに置いてあったレモンとマヨネーズに首を傾げた。
「イストはどっち派?」
2人の視線が私の手元に集中する。さて、どっち派とは?と意図が分からない私にラージュは寄って来た。
「知ってるか?からあげには派閥があるんだ」
「そんなのないわよ」
アムが苦笑しながらラージュの言葉にツッコミを入れていた。派閥とは?蒼の派閥や金の派閥とはまた違うようだ
「1つはマヨネーズをつける、2つはレモンをかける。この2つが特に定番なんだよ」

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運命の赤い糸、それは恋人同士の薬指に付いているといわれている。色が名前に入っているというのに、目には見えないらしい
(薬指……)
私も知らないわけではない、薬指は結婚指輪をはめるための指でもあるということを
「────無縁なことだ」
考えてた事が口に出ていたらしい、近くで本を眺めていたラージュが振り返った。
「ん?何か言ったか?」
「何でもないよ」
そっか、と彼は再び手に持っていた本を眺めだす。興味津々に見る彼の探求心は繭世界(フィルージャ)で1番だろう
最も繭世界の住人など3人しか居ないのだが、この中では積極性がある性格をしている方だろう

「そういえばイスト、この世界は糸にまつわるものが多いよな」
「……そうだね」
異識体(イリデルシア)を倒し、のんびりと暮らしている最中。釣りをしたり、料理をしたり、今までにないことをしてみたり。
次なる生命が誕生した時にも備えなければと3人で決め、それなら知識を身に着けなくてはならないといったところだ
だからこそ彼の知りたいという欲が本を読む、という行為に繋がっている。
「糸ってことは、蜘蛛の派生なんだろうな〜」
蜘蛛、といっても一般的な蜘蛛とは少し姿形が違うのだから独自な進化を遂げたのだろう
「うわ!こんな毛むくじゃらな蜘蛛もいるのか!」
「これはこれで鳥肌が立つな」

リィンバウムのどこからどこまでが残っているのかは分からないが、もしかしたらこの蜘蛛も居るかもしれないし居ないかもしれない
だが環境はそのままなのだろうから、いずれにせよ見かけることはあるかもしれない
「異識体みたいなタイプの蜘蛛も、この毛むくじゃらなタイプの蜘蛛も…正直気持ち悪いぜ……」
「様々な生き物がいるものだな」
だなー!と彼は明るく笑いながら本を閉じた。その瞬間、私のお腹が音を鳴らした。
「おいおい、蜘蛛見て腹空かせたのかよ?」
「そんなわけないだろう。だが蜘蛛を食用にすることもあるらしいし、明日ラージュに振る舞ってあげるよ」
「ご、ごめんって!冗談だよ」
ふふ、と笑えば身震いするラージュ。私は彼の散らかしていた本や資料、文具をまとめて立ち上がった。
「キルトがまだ来てないけど、オレもお腹鳴りそうだし行ってもいいよな」
私達は交代制で料理当番を決めていた。今日はアムが担当で、出来上がる際に相棒のキルトが呼びに来るようになっていた。
「そうだね、いい時間だ」

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