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「やはり何も起き「…待て」
ちら、と表情を見て驚いた。ロクロウの顔がほんのり朱く、動揺しているのか瞳孔が少し揺れていた。
「アイゼン……すまん、なんか…」
「おい、どうし……!?」
ずいっと壁に迫られ、明らかに様子のおかしい彼に眉をひそめた。
後ろからカチャ、と鍵を閉める音が静かに聞こえてはっとした。
どくん、と心臓が跳ねた。それから身体中に何かが巡った。
(何、なんだ、これは……)
双方困惑しながらも視線が絡んだ。俺は咄嗟に彼の後ろ髪を浅く掴んで引き寄せ、舌を出した。
彼の下唇をなぞるように舐め、それに誘われて出てきたロクロウの舌を絡めた。
そこからはもう止まらなかった。彼の口内が温かく、でもしっとりしていて心地がよい
「っあ……ん、う…」
「俺こそ悪いが…優しくしてやれねえ」

いきさつなどどうでもいいと言いたくなるくらいだった。俺はずっとこうしたかったんだ。
彼の右腕に付いている武具を取り外し、羽織を下ろして身軽にさせてゆく。いつにも増して肌が火照っているようにも見える。
「そんなに見るなよ……」
もぞりとするロクロウに思わずニヤついた。それはもちろん、袴が山を張っていたからだった。
「脱げ、汚したら代わりがねえからな」
「……っていうか、俺が下なのかよ」
「心配するな、優しく抱いてやらないこともない」
不本意そうな彼だがゆるゆると袴を脱いでいく、俺自身もそれに習って動きの妨げになりそうなジャケットを脱いだ。
想像もしていなかった状況に興奮を覚え、己も彼の状態とほとんど変わらない
「俺は以前からお前に触りたかったんだ」
「…何……?」
「あ、いや……」
口走ってしまった。言うことなどないだろうと思っていたからつい油断をしていた。
「それは…指輪を付けてるからか?それならまだ納得する」
「違う」
ぐっと強めに彼の手首を掴んだ。ぎりりと軋んだが、ロクロウは表情を変えなかった。
「言うつもりはなかった…というよりは、こんな機会ないだろうと思っていたからな」
業魔であるロクロウやベルベットと旅をしている以上、逃れられないのが穢れの影響だ。だがそれは仕方ないと割り切っていた。
しかしロクロウも避けている訳ではないが、どうしても距離を置いてくる。その気持ちもくんでいたからこそ諦めていたのだ。
彼は出来る限り人間であるエレノアやマギルゥを間に挟んで接してくることも、穢れの進行を少しでも進ませないようにしてくれていたのは知っていた。
だから、こうやって触れること自体が彼の配慮に反する。指輪を嵌めた影響はあったのかもしれないが、嬉しく思ったのも正直なところだ


俺は左手の人差し指に嵌めた指輪を、改めて紅く光る宝石を眺めた。
この指輪は何の呪いなのか祈りなのか知らんが、穢れの影響を一時的に呑み込んでしまうとんでもない物だということは分かった。
呑み込むだけではなく、それを別の欲にすり替えるというとんでもない物だということも何となく感じた。
だからだ、俺がこの指輪を気味悪がったのはそれが原因だったんだ。俺の『斬る』という欲や本能を無かったことにしてくる。
そして聖隷であるアイゼンに対する影響はおそらく、業魔からの穢れも遮断するものになっているのだろう
聞いていないから正しいかどうかは定かではないが、俺もアイゼンもお互いに必要以外接触することはなかった。
なのに今やそれ気にせず、欲に犯されているみたいだった。穢れなんて忘れてしまったかのような感覚にすらなってしまっている。

「お前が俺やライフィセットに配慮してくれていたのは知っていた、それが仕方のないことだとも。だが俺はずっと触りたかったのも事実だ、これは指輪を嵌めた影響じゃない。それより前から思っていたことだ」
またペラペラと随分恥ずかしいことを暴露するもんだ、しかしそれはアイゼンの本心であることも理解していた。
「指輪を嵌めたからだなんて意地の悪いことはもう言わん、俺もずっとそうしたかったしな」
「お前……随分と煽ってくれるな」
「何がだ?」
首を傾げている俺にアイゼンは苦笑しながらも、彼は俺の腰に触れた。
お互い汗でしっとりとしているが悪くはない、脱ぎ掛けていた下着も彼によって取り払われる。

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じ、と指輪を改めて見てみる。しかし初めに見た感想とそう変わりなく、紅くて女性に贈り物したら喜ばれる一品だろう
だがどうしても引っ掛かる。ロクロウやダイルは明らかに苦い表情をし、一切触ることもしなかった。
業魔からは気味悪がられている、触るのも躊躇うほどの何かがあるのだろう
本当に“浄化の指輪”だとしたら、業魔化を抑える作用でも働く物なのだろうか。だとしたら、欲を抑えられる業魔からしたら息苦しいことこの上ないことだろう
(でも、俺の憶測が合っているとすれば────。)
指輪を戻す際、指先に何かが触れた。埋もれてて初めは気付かなかったが、小さいメモが出てきた。
「指輪を嵌める指一覧?」
「またド丁寧に指定してくるものですな」

『私は右手の人差し指へ
貴方に左手の人差し指へ』

顎に手を添え意味をくみ取る。おそらくこの指輪の持ち主は意中の相手に指輪を贈ろうとしていたのではないだろうか
そして最後の一言はおそらく叶わなかった、そんなところだろう
しかし、意中だとしたらなぜ左手薬指でないのか。そもそもこんなに指輪が必要なのか、人間は指輪を多く贈る習慣などなかったはずだが
「ま、とにかく良い物を見せてもらえたのでド感謝しますよ。噂話ではなかったと」
「それでも結局どういう指輪かは分からないままだがな。念のため、何か分かったら伝える」


分からないなら試してみるしかないわけであって、この指輪にそう悪い何かがあるとも思えない
思わずため息が出た。指輪を嵌めるのはいいが、一体どこの指に?とはいっても指輪なのだから正直どこに嵌めても同じかもしれない
あのメモにわざわざ指定されてあった意味とはなんなのか
あまり深く考えず両手袋を外し、利き手ではない右手の人差し指へ嵌めてみた。すると、紅く光っていた宝石が中でゆっくりと渦を巻き始めた。
(な……んだ、これは)
力がみなぎって来ただとかそういう感じではないが、身体が見えない何かに覆われているような
覆われているという表現は正しくない、のだが言葉にするならそれしか当てはまらない
「おーい、アイゼン?…って、まだその指輪見てたのか?」
俺を探しに来たであろうロクロウが顔を出した。しかし指輪を見た途端にまた複雑そうな表情になる。
「……ロクロウ、試しに嵌めてもらっていいか?」
「断る。なんか嫌なんだよ、その指輪」
不機嫌さを隠さないロクロウ、この指輪を前にすると非常に彼らしくなくなる。確かに斬ることが欲となっている彼を抑え込む物だとしたら本能的に拒否して当然だ
「そうか」
ほんの少しだけでも嵌めてもらえれば良かったのだが、無理強いはしたくない
他に嵌めてもらえそうな業魔など居ただろうかと唸っていると、後ろに立っていたロクロウが軽くため息をついた。
「その指輪、そんなに大事な物なのか?」
「大事……違うな、可能性があるんだ」
可能性って何のだ?と聞き返された。俺はそこで気が付いた、俺自身が落胆していたことに
ロクロウに少しだけ期待していたからだ、この指輪が本当に“浄化の指輪”であるならばもしかして

「それは、嵌めたら教えてやらないこともない」
「…分かった、気は進まないがその可能性ってのも気になるしな」
ロクロウがあれほど嫌がっていた指輪を手にとった。とは言いつつ表情は変わっておらず、嫌そうなままではあるが
「左手の人差し指に嵌めてみてくれ」
「お?薬指じゃなくて人差し指でいいのか?」
「……お前、俺と婚約するつもりか?とはいえ、俺は右手の人差し指だがな」
ちらっと右手を見せた。よく分からんが分かった、とロクロウはゆっくりと左手の人差し指へ指輪を嵌めてみた。
嵌めたからといって早々何かが変わることはなく、ロクロウは不思議そうな表情で突っ立っていた。

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