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出だしからとんでもない物が釣れてしまった予感がした。
「すまんアイゼン、折れちまった」
「仕方がない、その竿自体も随分長く使っていた代物だったからな」
折れた先は海に落ちてしまったようだし、修復するよりは新たに買ってしまった方が良いだろう
「引き上げてる最中に嫌な音がしたからやめようと思ったんだが、大物だったとしたら逃すのは勿体ないと思ってな」
「なに、後でお前のツケで払うんだから気にしてない」
「分かっ……えっ!?…あ、ああ…承知した」
苦笑するロクロウに俺は低く笑った。単なる口実だったが、良い機会を得られたかもしれない

さて、肝心の釣り上げた宝箱はどうなっているのか
俺はまだ開けられていない宝箱に目をやり、覗き込んだ。
「どうしたライフィセット、開かないのか?」
鍵はとうに解錠されていたが、どうやら蓋が開かないようだった。
「俺も開けようと思ったんだが、トカゲの手だし上手く開かなくてよ」
2人ともお手上げ状態だった。長い事海に沈んでいたとしたら開かないこともある。
俺も力を込め、蓋を開けようとしたが全く開く予感がしない
「……っくそ!ビクともしやがらねえ、どうなってやがる」
「どれどれ、今度は俺にやらせてくれ」
ロクロウと交代し、彼が手を掛けた瞬間にパカッと開いた。
「……あ?」
「なんだよ…拍子抜けだなぁ」
彼がゆっくりと蓋を開けると、そこには指輪がたくさん入っていた。どれも紅く、一見は綺麗だと思った。
もしかしてこの指輪は……もしかするのかもしれない、俺が探していたあの指輪だとしたら

「……なんだこれ…」
ロクロウの声が明らかに不機嫌さを増した。心なしかダイルも表情が暗い、なんだ?何が起きている…?
急に様子が変わった2人に対し、ライフィセットはとても目を輝かせていた。
「わぁあ!綺麗……!」
指輪を手に取り、眩しそうに眺めるライフィセット。俺もそれを手にし、まだ艶のある宝石に息を呑んだ。
「ロクロウ、この指輪のことを知っているのか?」
「いや全く……だが、なんというか、何だろうな、これは」
ダイルも唸るばかりではっきりしない、2人はしばらくその指輪を見て複雑そうな表情をしていた。
「上手く言えんが、なんだか見ていて苦しいというか……指に嵌めたら食い千切られそうな感じだな」
「そうそう!俺もそんな感じだ!なんだか恐ろしいんだよこの指輪」
その指輪を触るどころか、見た途端に2人に落ち着きがないのは指輪が何らかの効果を発揮していると考えた。
(現にライフィセットや俺は嫌がるどころか美しい代物だと思っている……)
その境界線は聖隷か業魔か、そしてこれが例の“浄化の指輪”だとしたら腑に落ちる。
ただしこれが本当に例の物だという確証はない、単なるアテにならない予感だけだ
「ロクロウ、これは俺が預かってもいいか?見てもらえれば何か分かるかもしれん」
「応、構わん」
そのあとも釣りは続き、死神の呪いでライフィセットが次々とタコを釣り上げたところで切り上げた。


「こ、こいつはド驚いた!」
古物商のドネラに早速見てもらうと、指輪をひと目しただけで驚いていた。
「噂でしか聞いたことがなかったド希少なあの───」
「“浄化の指輪”……か?」
そうそう、とドネラは興奮気味に指輪を眺めていた。
どの時期に造られた物なのか、劣化も感じさせない状態でなおさら興味深いと彼は語る。
「この指輪、どう感じる?」
「そうだな……ド深い混沌、といったところだろう」
混沌?と思いもつかなかった言葉に表情を険しくすると、ドネラは深く頷いた。
「ド紅く輝くこの指輪、おそらく見方がド変わりする代物だ」
「ほう、どうしてそう思う」
「ただの指輪として見るならそれなりの感想で終わる。だがド綺麗に見えてド奇妙に代物にも見えますねえ」

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掴めば届く距離、そういった場面に直面した時にどう行動したら正解なのだろうか
以前の俺ならそれも死神の呪いだと受け止め、構わず選んだだろう

地図を眺めて嬉しそうに説明する少年のライフィセットと、顎に手を添えて頷く青年のロクロウが確認出来る。
そしてそれを後ろから覗き込むダイルの姿もある。
それらを見て、ガラにもなく物思いにふけちまってる自分自身にため息をつきながら舵を取る。
今回は異海の領域までは行かずとも、その近くでまた釣りをしたいとライフィセットがお願いしてきた。
きちんとベルベットの許可も得た上での航海だ、もちろんライフィセットの強い要望で彼女は船に乗っていない
他の女性陣もサレトーマを飲むのは勘弁してほしいと、そもそも今はサレトーマの在庫もないためその方が懸命ではあるが
(男だけってのも、久々かもしれねえな)
バンエルティア号はベンウィックに任せてある。ベルベット達に何かあればシルフモドキが飛んでくるだろう


『グリモワール』
古文書を眺めていた彼女に声を掛けた。周囲には誰もおらず、俺にとって都合は良かった。
『あら珍しい、何かしら?』
『聞いたことあれば教えてもらいたいことがある。“浄化の指輪”というのを耳にしたことはあるか?』
そうねえ…と彼女は静かに呟き、本をぱたんと閉じた。視線を感じるが、そこに勘繰るような意図は感じられない
『あるにはあるけれど……あたしもその逸話には詳しくないの、それに作り話だって説が1番信じられているくらいあやふやなものなのよ』
『それは…俺も聞いている。ただ、もしあるなら』

最初で最後でいい。あるのなら一度だけ使ってみたいと思った。
その“浄化の指輪”とは、迷信と言い切れてしまうくらい情報が少なかった。逸話や作り話と片付けられてしまうのがいつものことだった。
過去に別の海賊から聞いた話では業魔が綺麗になるだのと意味不明なことを言っていた。
またある商人からの話では業魔に触れるだの、雲をつかむような話ばかりしか聞いたことがない

『ふぅ……そうね…その指輪は紅いんじゃないかしら。まるで緋の夜に浮かぶ月のように紅いと聞いたことがあるわね』
グリモワールが知っているくらいなのだからもしかして実在するのかもしれない、しかし当然手にしたなどという話は聞いたこともない
不必要な内容であるなら彼女も覚えておくことすらしなかっただろう。だからこそ彼女の情報は有り難いものだった。
『そうか……参考にさせてもらう』
『どういたしまして』


元々ダメ元で探しに来ているようなものだ。淡い期待を抱きつつ、あれば良かった程度だと胸に秘めた。
「この周辺が異海の領域付近になる。釣り竿はそこにまとめてあるから好きに使ってくれ」
「うん、ありがとう」
ライフィセットは釣り竿を手に取り、早速準備に取り掛かっていた。
それに続いてロクロウも餌を用意し、今度こそはと意気込んでいる。
とはいえ俺が居るだけでまともな物は釣れない可能性が高そうだが、そこは黙っておいた。
「…あ!ロクロウ、引いてるよ!」
「おっと、負けられん!」
グイグイと引っ張るロクロウに、横でダイルがたも網をいつの間にか持って待ち構えていた。
「っ…おお、待っ……!」
「ロクロウ!」
遠くで見ていたが、慌てている3人の様子に俺も近付いた。
「どうした?」
「うおお、やべえやべえ!!でけえぞ!」
逆に引き摺られているロクロウとそれを阻止するために彼の腰を固定するダイル、隣にはダイルからたも網を預けられたライフィセットが焦っていた。
一瞬変な感情が混ざって困惑したが、気のせいだと思い込んで海を覗いた。
底には黒い影が広く見える。業魔ではなさそうだが竿も大きくしなっており、存在感は圧倒的だった。
手を貸そうとしたがこの拒否感と虚無感は何なんだ。俺は、悔しがっているのか?
「アイゼン!お願い…!僕じゃ力不足どころか足を引っ張っちゃうっ」
ダイルも踏ん張ってはいるものの、彼すら引き摺られ掛けていた。
「……すっ飛ぶんじゃねえぞ!」
しなる竿と船を鎖で繋ぎ、段々とそれは姿を見せてきた。
「た……宝箱…?」
ライフィセットが怪訝そうに呟くと同時に、宝箱は勢いよく甲板に転がり落ちた。派手な音をさせた割に床は一切傷付いていなかった。
ヘトヘトになったダイルは床にあぐらをかいており、ロクロウは釣れた勢いで折れた竿を見て呆然としていた。

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ぱち、ぱちち… 静かに火が散った。風向きが変わり、胡座をかいていた片膝を静かに立てた。
一瞬で決めてやる。鞘から勢いよく妖刀を引き抜き、斬る。
「ガはッ……!」
さらに大きく斬り上げ、そこに遠慮など必要ない
鳥のような姿を象った悪魔は呻き苦しそう乞うてきたが、赤く光る胸元の光を目掛け貫いた。
赤黒い血と硬い破片が飛び散り周囲を汚した。
(何が悪魔だ)
俺の父上を、母上を、俺の目の前で殺したのだ。いくら殺しても殺しても、悪魔は復活する。
悪魔はこの世から一匹残らず俺が殲滅してやる。そう、強く誓い生きてきた。

「……ぐ、…」
顔を上げ、亡骸と化したと思っていた鳥の首を掴み上げた。
「まだ息があったのか、酷なことをしたな」
妖刀を構え一刀両断。胴体は崩れ、死を確信した時だった。
「くっ…!」
血があらゆる方向に吹き出し、段々とそれは紫に変わっていった。
首を投げ捨て、腕で顔を拭った。穢らわしい悪魔の血だ、さっさと洗い流して次に向かわなければ
そういえば近くに川があったはずだ。そこを目指して俺は歩きだした。

「……っくそ…」

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