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「こら〜!好き勝手喋るでないわ!6月6日はロクロウの日、および兄の日と提唱されておるのだからやらない手はないじゃろ」
あれを出さんかとシグレに肘で合図し、これか?とフリップを立てた。
「1つ目!お兄ちゃんは…… ネコが好きである!…ってなんで俺の好みが暴露されてんだよ」
「ネコ好きは事実じゃろ?確かアイゼンもそうじゃったかのう?」
む、とアイゼンが表情を険しくした。そういえば強いて言えば妹みたいだからネコ派と言っていたか
「否定はしない、ネコの愛らしさに妹は近いからな」
そんなの論外じゃない、とベルベットに窘められていた。
はい!と突然オスカーが手を上げながら起立して語り始めた。
「ちなみに僕はネコ派です!華奢な所が……似ていますので」
「そうなのですかオスカー?私はイヌ派なのですが……」
お互い首を傾げている。シグレが苦い顔をしているのが見えた。
ネコ派だが華奢じゃねぇネコも居るぞ、と一応オスカーに突っ込んでいた。

まとまらんから次行くぞ!とマギルゥが台を式神でバンバン叩いた。そんな扱いでいいのか?
再びシグレを肘で促し、次のフリップを台に立てた。
「2つ目!……お兄ちゃんは甘い物が好きである!…誰だよタレコミした奴は」
タレコミって何ですか?とオスカーが尋ねるも、そこは気にしたらいけませんとテレサが答えていた。
「甘い物か、ここはパルミエ一択だろう?異論は認めない」
「違うよ!ここはマーボーカレーだよ!」
ライフィセットが勢いよく立ち上がり、アイゼンに火花を散らしていた。
坊よ、マーボーカレーは甘い物じゃなかろう?とマギルゥが座るように指示する。
だったら甘口で!とライフィセットは一歩も引く気はないようだった。
「異論大ありよ、姉さんの料理が1番なんだから」
ベルベットはアイゼンを煽るかのように視線を向けていた。それは全般に言えちまうだろうが、とアイゼンが返す。
せめて甘い物って枠の中で話し合えよ、とシグレが嘆くように呟いた。

「最後のフリップは儂が出そう♪3つ目!お兄ちゃんは結局のところ、弟が好きである!」
思わず心水を吹き出した。この状況において楽しんでみるかという考えで呷っていたら斜め上からの追撃だった。
げほっ!と幾度となく咳をし、無理矢理に息を整える。なんてことを聞いてんだ
ポカンとシグレは瞬きをするだけになっていた。気の所為でなければ雛壇の連中は呆れながらもほっこりしていた。
「ほれ、なんとか言わんか」
なんとかって…とシグレは腕を組んで唸り始めた。なんだ、俺は何を見せられているんだ?
「……否定はしねぇな!必死になって俺を追って斬りに来る所なんざ、お前ら兄弟姉妹にはない感情だろ?」
ないかもしれませんけど…とエレノアが複雑そうな表情をする。シグレの言う通り“斬ろう”とする仲はここだけだろう
「素晴らしい兄弟愛ではないか〜!儂も兄か姉、もしくは弟か妹でもおれば違ったかもしれんの〜」
あなたの家系だとどちらにせよ捻くれそうですね、とテレサが答えるとマギルゥがプンプン怒り出していた。

はあ、と胸を一旦抑えてから徳利を傾け猪口に心水を注いだ。とんでもないものを見せられたし聞かされた。
正直俺自身も分かってはいないが、別の可能性があったとしたら純粋に兄として慕う所もあったかもしれない
この状況を未だに呑み込めてはいないが、不思議と嫌な気分ではない
改めて心水を呷ったと同時に幕は閉じられ、長く細い息を吐いた。

「悪くない、美味かったぜ……兄貴」

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コホン、とわざとらしく咳払いをした魔女に俺は怪訝な表情で座るように指示された場所へ胡座をかいた。
「ようこそ〜!マギルゥ奇術団の座談会へ!」
『ちょ、ちょっとマギルゥ…!今日は奇術団じゃないでしょ…!?』
舞台袖からそんな会話が聞こえたが、苦笑しつつ聞こえぬフリをして舞台を眺めた。
「おお…そうじゃった…… え〜…マギルゥとその仲間達による六々トーク♪」
『あれ?僕の貰った台本だとタイトルが違ったような気がしたんだけど……』
『この紙切れ1枚って台本だったんですか…!?早速行き当たりばったりじゃないですか…!』
漏れて聞こえる仲間の声に、内心大丈夫かと思いながら徳利を取り出した。

「まず初めにお断りじゃが、今から出てくるものは全て幻覚という名のイメージなので細かい所は気にするでないぞ♪」
さらっととんでもない事を言っているが、どういうことだ?と不思議に思いながらもそのまま猪口に心水を注ぐ
ジャラジャラと音がしたので目をくれると、アイゼンが出したであろう鎖がカーテンを広げていた。まさかの人力、いやこの場合は人力というのか?
パッとカーテンが十分に開き切って照明が舞台に照らされたかと思えば、中央にどっかりと座ったシグレの姿があった。
「なっ……!?シグレ…!?」
姿勢を変え二刀小太刀を構えようとする前に空を掴み、手元を見るとさっきまであった得物が姿を消していた。
「お前の探し物はこれか?」
舞台上から兄貴の声がし、振り向けばさっきまで此処にあった物がシグレの両手に瞬間移動していた。
舌打ちをし大太刀を構えようと柄を掴んで鞘から取り出そうとするも、カチカチと鳴り何かが突っかかっているようだった。
「ぐっ…何、なんだよ…!!」
「よく聞け、俺も未だに理解出来てねぇがここでは一戦交える事が出来ないらしい」
納得したくはないが、シグレが言うのだからきっとそうなんだろうし既に試したんだろう
一呼吸おいて溜息をついた。マギルゥが冒頭で言っていた言葉の意味がここで理解出来るとは
「俺の號嵐も盗まれたしな!どうにもならない以上は愉しむしかないだろ」
「元気よく言う事じゃないぞ……」
「…とまぁ、早速仕組みを理解してもらった上で進めるぞー?」
舞台袖から真横に顔を覗かせたマギルゥがそう言い、一度舞台が暗転した。

もやもやしながらも“斬る”ことが適わない以上、癪であるが此処は楽しむしかないのだろう
再びパッと舞台が照らされたかと思えば司会にはマギルゥとその横にはシグレが居て、雛壇には見慣れた連中がそれぞれ座っていた。
「さて始まりました!お兄ちゃんLOVE♡LOVEトーク!!」
「なんでまたタイトルが変わってるのよ……」
上段に座るベルベットが呆れ、隣に居るアイゼンも分からんと答えていた。
「あの……私達は…」
中段にはテレサとオスカーが座っており、とても困っていそうだった。刃を交えた事はあるが、まともに喋った記憶はない
「お兄ちゃんラブ、ですか…… つまり姉上が兄上だったら、ということでしょうか?」
「ええと、おそらく違う気が……なぜ呼ばれたのでしょう…?」
下段にはライフィセットとエレノアが座らされており、唯一兄弟姉妹には該当しない2人でまとめられたようだった。
「始まる前からドタバタしてたけど、楽しみだなぁ〜」
「そもそも何をするんですか?幻覚だったらこの状況はとても良くないのでは…」
エレノアの言う事はごもっともだが、マギルゥが絡んでいる以上は何かあるんだろう
そもそも師はあのジジイであるし、事実武器も没収されてしまっているのでどうしようもない

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