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「はっ…おっさん、何だよ…夜這いか?」
「青年、どういうキスするかと思ってね」
体を起こすと、隣にはレイヴンが座っていた。

「ま、オレは構わねぇけど」
レイヴンの腰に手を回すが、それは拒否された。
視線を移すとレイヴンは顔を左右に振った。
「ダメよ青年、キスだけ」
「…ったく、何なんだよ」
萎えるぜ、と付け足す。

「俺様が有りのままを青年に晒す時が来たら、ね」
「…そりゃいつ来るんだかな」
ユーリは再び寝転がる。

「ユーリはキスで俺様の上を越えられるかな~?」
「そんなの競うモンじゃねーだろ」
あらら~、とレイヴンは言った。
「こっち側に青年は興味ないのねー」
「あんたが拒否したからな」
ユーリは寝に入る体勢の間々言った。
「キスだーけっ」
レイヴンはユーリの唇を奪った。

そのキスは実に濃厚だった。
舌を絡め、熱い温度を感じる。

「んっ、はっ…おっさ…!」
ユーリは驚いた。
「何?」
レイヴンはいつもの表情

(ほ、本気…?)
先程のキスからは愛おしいような、そんな気持ちを感じた。
「っ……おっさん…?」
訳の分からないキスに戸惑うユーリ

「ありがとね、おっさんの下らない気持ちに付き合ってくれて」
レイヴンを見ると、物寂しげに見えた。
それは背後の空から見える月が更に寂しさを強めた。

「おっさん……」
「ん?」
ユーリがレイヴンに呼び掛けた時にはいつものおっさんだった。
「…何でもねぇ、やっぱおっさんは胡散臭いな」
そう言って布団を被った。


レイヴンは窓際に向かって歩いた。
(…十四歳年下に恋するなんて馬鹿みたい、しかも同性だし…)

どこかで歯車が狂い始めたのだろう
その時計も絶えず過去へ回る

(…馬鹿、本当に馬鹿…こんな青年達に……)
少しでも自分が助かるんじゃないかと望んでしまう
いいや、どうせなら戦で死ねれば良かった

(どうせ、こんな辛い事なんてすぐ終わる)
今度こそ嘘でもなく、本当の死を望む

心臓代わりの魔導器がズキンと痛んだが、レイヴンは気にしなかった。
あと少し我慢するならたやすいものだった。

その頬から流れた一粒の雫は床を濡らした。

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