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「…明日も早い、それを飲んで早く寝ろ」
「寝れねぇから来てんだろ、もう少しいさせろよ」
「仕方がない奴だ、君は」
アレクセイは木の枝を薪としてくべながら、少しだけ笑った
火がゆらゆらとアレクセイの顔を照らし、ユーリはその横顔をチラリと見た
端正な顔だと思う
とても40代には見えない
そこでふと気がついて、ユーリも笑う
「あんたもそんな顔して笑えんだな」
「……?」
「そんな柔らけぇあんたの笑顔、初めて見た」
アレクセイの狂気の笑いは見たことがあるが、優しげな笑いは見たことがなかった
仲間になってからも常に無表情を貫き、表情を変えるときは滅多になかった
なんだ、やっぱり人並みの感情を持っているじゃないか
そう感じて、ユーリは少しだけ嬉しくなった
皆が知らないアレクセイを、自分だけが知っている
独占欲になりかねない優越感をユーリは感じていたのだ
「私を悪魔かなにかと勘違いしていないかね?」
「昔はそう思ってたけど、あんたがマトモな人でよかったよ……あんたがなんで人から慕われるのか、分かった気がする」
空になったカップをアレクセイに返して、ユーリは軽く伸びをする
「慕われるなどと…私はただの罪に…」
「言うなよアレクセイ」
アレクセイの言葉を遮って、ユーリは言った
「あんたは確かに罪人だ…それは俺も変わらない。だけどな、こんな俺でも慕ってくれる奴はいるんだ」
「少年や姫様、モルディオ辺りか
私としては君が慕われている理由が分からないな」
「…最後のは聞かなかった事にしてやる
そうだ。罪人だから慕われる権利を持ってないワケじゃない…勝手に慕わせときゃいいんだよ、そんなもん」
俺も、少しだけあんたを慕ってんだぜ
ユーリは心の中で付け足した
そう、ユーリはアレクセイを少しだけだが尊敬しているのだ
戦況を即座に把握する洞察力
的確に指示を出し、時には大博打に挑む事もあるその判断力と行動力
そしてその判断が間違っていないのだから、彼の42年間は伊達ではない
「そういう…ものか?」
「そんなもんなんだよ」
何故だろう
アレクセイがそばにいると何故か落ち着く
今の、仲間であるアレクセイにならば何もかも話してしまいそうな…
いや、話してしまいそうになり、ユーリは首を傾げた
俺はアレクセイを信頼しているのだろうか
信頼か?尊敬か?それとも……
最後に思いついた選択肢を頭を横に振って頭ごなしに否定し、ユーリは自分の気持ちが分からなくなって腕を組んだ
お互いが敵であった頃、ユーリはそんな事を考えなかった
ただ倒すべき敵だとしか認識していなかった
確実に変わっているこの気持ちをユーリは信じたくなかった
「……何を悩んでいるかは知らないが頭は大丈夫か」
「うるせぇあんたのせいだ!!」
アレクセイは呆れたように言い、ユーリは思わず大声で言い切っていた
そのユーリの口はアレクセイの手の平で隠され、ユーリは一瞬息をのむ
「少し静かにしたまえ……皆が起きてしまう」
「……悪い」
「それで、一体何が私のせいなのだ
何かあるなら……善処するが?」
アレクセイはユーリの口にかざしていた手の平を頭にやり、唐突にゆっくりと撫で始めた
その行動に驚いたユーリは、頭に乗せられたアレクセイの手を掴んで放る
「なにすんだ!?」
「なんとなく撫でたくなっただけだ」
「……子供扱いしてんのか」
「私にとって君はまだ子供だ
まだ21だろう?私の半分しか生きていないではないか」
「…あんたなんか嫌いだ…」
両手を頭の後ろに回して寝転がり、夜空を見上げた
あの空を覆う星喰みをなんとかしなければならないのだ
それはユーリもアレクセイも変わらない
いや、思いが強いのはアレクセイだろう
彼にとって星喰みとは己の罪の象徴なのだから
「それは以前からではなかったか」
「そういう態度が嫌いなんだよ」
「はは、まるで反抗期の子供のようだな」
「からかってんじゃねぇよ」
繰り返される言葉はお世辞にも良い内容だとは言えなかったが、ユーリはアレクセイと話していて悪い気はしなかった
本当に、アレクセイは丸くなったと思う
敵として対峙したあの時に比べれば別人と言ってもいいかもしれない
そんなアレクセイに、ユーリは好感を持っていた
「……ん?」
「……うぅ……」
「寝たのか」
しばらく経ち、アレクセイがユーリを見ると、彼は既に夢の世界へ旅立っていた
「仕方ないな」
アレクセイはユーリを起こさないように抱え、テントへと向かい入り口を開いた
「よ、大将」
「レイヴン……起きていたか」
何故かレイヴンは起きていて、アレクセイは彼に構わずユーリを寝かせて毛布を掛ける
カロルはすっかり熟睡中だ
「お前も寝ろ」
アレクセイはそのままテントを出ようとするが、レイヴンが声をかけた
「青年が大将の事をどう思ってるか、知ってる?」
「……さぁな」
「青年言ってたわよ?『よくわかんねぇけど父親ってあんな感じなのかな』って」
アレクセイは振り返らないまま立ち止まった
しばらくそのままだったが、何も言わずにテントを出る
「父親、か……」
焚き火と向き合うように座ってアレクセイは呟いていた
次の日、やけに仲良く話すユーリとアレクセイの姿があったとか
END
「寝れねぇから来てんだろ、もう少しいさせろよ」
「仕方がない奴だ、君は」
アレクセイは木の枝を薪としてくべながら、少しだけ笑った
火がゆらゆらとアレクセイの顔を照らし、ユーリはその横顔をチラリと見た
端正な顔だと思う
とても40代には見えない
そこでふと気がついて、ユーリも笑う
「あんたもそんな顔して笑えんだな」
「……?」
「そんな柔らけぇあんたの笑顔、初めて見た」
アレクセイの狂気の笑いは見たことがあるが、優しげな笑いは見たことがなかった
仲間になってからも常に無表情を貫き、表情を変えるときは滅多になかった
なんだ、やっぱり人並みの感情を持っているじゃないか
そう感じて、ユーリは少しだけ嬉しくなった
皆が知らないアレクセイを、自分だけが知っている
独占欲になりかねない優越感をユーリは感じていたのだ
「私を悪魔かなにかと勘違いしていないかね?」
「昔はそう思ってたけど、あんたがマトモな人でよかったよ……あんたがなんで人から慕われるのか、分かった気がする」
空になったカップをアレクセイに返して、ユーリは軽く伸びをする
「慕われるなどと…私はただの罪に…」
「言うなよアレクセイ」
アレクセイの言葉を遮って、ユーリは言った
「あんたは確かに罪人だ…それは俺も変わらない。だけどな、こんな俺でも慕ってくれる奴はいるんだ」
「少年や姫様、モルディオ辺りか
私としては君が慕われている理由が分からないな」
「…最後のは聞かなかった事にしてやる
そうだ。罪人だから慕われる権利を持ってないワケじゃない…勝手に慕わせときゃいいんだよ、そんなもん」
俺も、少しだけあんたを慕ってんだぜ
ユーリは心の中で付け足した
そう、ユーリはアレクセイを少しだけだが尊敬しているのだ
戦況を即座に把握する洞察力
的確に指示を出し、時には大博打に挑む事もあるその判断力と行動力
そしてその判断が間違っていないのだから、彼の42年間は伊達ではない
「そういう…ものか?」
「そんなもんなんだよ」
何故だろう
アレクセイがそばにいると何故か落ち着く
今の、仲間であるアレクセイにならば何もかも話してしまいそうな…
いや、話してしまいそうになり、ユーリは首を傾げた
俺はアレクセイを信頼しているのだろうか
信頼か?尊敬か?それとも……
最後に思いついた選択肢を頭を横に振って頭ごなしに否定し、ユーリは自分の気持ちが分からなくなって腕を組んだ
お互いが敵であった頃、ユーリはそんな事を考えなかった
ただ倒すべき敵だとしか認識していなかった
確実に変わっているこの気持ちをユーリは信じたくなかった
「……何を悩んでいるかは知らないが頭は大丈夫か」
「うるせぇあんたのせいだ!!」
アレクセイは呆れたように言い、ユーリは思わず大声で言い切っていた
そのユーリの口はアレクセイの手の平で隠され、ユーリは一瞬息をのむ
「少し静かにしたまえ……皆が起きてしまう」
「……悪い」
「それで、一体何が私のせいなのだ
何かあるなら……善処するが?」
アレクセイはユーリの口にかざしていた手の平を頭にやり、唐突にゆっくりと撫で始めた
その行動に驚いたユーリは、頭に乗せられたアレクセイの手を掴んで放る
「なにすんだ!?」
「なんとなく撫でたくなっただけだ」
「……子供扱いしてんのか」
「私にとって君はまだ子供だ
まだ21だろう?私の半分しか生きていないではないか」
「…あんたなんか嫌いだ…」
両手を頭の後ろに回して寝転がり、夜空を見上げた
あの空を覆う星喰みをなんとかしなければならないのだ
それはユーリもアレクセイも変わらない
いや、思いが強いのはアレクセイだろう
彼にとって星喰みとは己の罪の象徴なのだから
「それは以前からではなかったか」
「そういう態度が嫌いなんだよ」
「はは、まるで反抗期の子供のようだな」
「からかってんじゃねぇよ」
繰り返される言葉はお世辞にも良い内容だとは言えなかったが、ユーリはアレクセイと話していて悪い気はしなかった
本当に、アレクセイは丸くなったと思う
敵として対峙したあの時に比べれば別人と言ってもいいかもしれない
そんなアレクセイに、ユーリは好感を持っていた
「……ん?」
「……うぅ……」
「寝たのか」
しばらく経ち、アレクセイがユーリを見ると、彼は既に夢の世界へ旅立っていた
「仕方ないな」
アレクセイはユーリを起こさないように抱え、テントへと向かい入り口を開いた
「よ、大将」
「レイヴン……起きていたか」
何故かレイヴンは起きていて、アレクセイは彼に構わずユーリを寝かせて毛布を掛ける
カロルはすっかり熟睡中だ
「お前も寝ろ」
アレクセイはそのままテントを出ようとするが、レイヴンが声をかけた
「青年が大将の事をどう思ってるか、知ってる?」
「……さぁな」
「青年言ってたわよ?『よくわかんねぇけど父親ってあんな感じなのかな』って」
アレクセイは振り返らないまま立ち止まった
しばらくそのままだったが、何も言わずにテントを出る
「父親、か……」
焚き火と向き合うように座ってアレクセイは呟いていた
次の日、やけに仲良く話すユーリとアレクセイの姿があったとか
END
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