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「何を苛立っている」
普段も鋭いが、今は特に鋭く尖るような目つきだ
その唇は開かない、しかし嫌な雰囲気が流れているのは分かる
「用がないなら出て行ってくれ、掃除しなきゃならないんだから」
ここでどう言えば、彼の表情は和らぐだろうか
俺は感情豊かではない、だからどうしたらいいかも分からない

「……会いたかっただけだ」
目的を一つ、ただ残念なのは彼が笑っていないこと
溜息をついている、俺はどうしたら良いのか
「女の匂いを付けて来ないでほしいんだよね、とても不愉快になるんだ」
「…そんなことで怒っていたのか?」

ぐわっとザエルアポロの霊圧が跳ね上がった。
ピリピリとしているらしい、随分と気が短いようだ
投げ付けられた試験管が顔に当たり、それが落下して派手に割れた。
「いい加減にしてくれ!お前の顔なんか見たくないって言ってるんだ!!」
ザエルアポロが怒っている、なぜだ…なぜ怒っている?
「出て行け」
背中が見える、俺は一度だけ瞬いて踵を返した。
このまま部屋に居ても彼の機嫌は直らないだろう

廊下を歩き、気持ちがぽっかりあいた気分になる。
彼は連行した女に怒っているのか?それとも匂いか?
分からない、そんなことで怒るような奴だっただろうか
だが今確実に分かることは、彼と接触してもそれは収まらないということだ

目をつむり、静かに息を長く吐いた。
思い出すあの霊圧、何だか苦しくなる。
胸が、キュッと締め付けられる。
それに戸惑いながらも、夜の砂漠へと向かった。




「ザエル、アポロ、さまっ」
「ザエルアポロ、さまっ!」
ピョンピョンと跳ね、白い何かが舞っている。
ゆっくりと起き上がった、カッとなってからどうなったんだっけな
「……ティッシュ?」
目の前に舞い降りたそれを掴むと、柔らかい素材で出来た紙だった。
頬に伝う濡れたそれに二人は気付いたらしかった。
くしゃりと軽く握って、悪態をついたが目元に一度だけ押し当てた。

(泣いていた…?この僕が?)

はっきりと涙が滲んでいた、同時にぽっかりとしたような気持ちになった。
それがまた何だか気味が悪くて、僕はティッシュを適当に投げた。
片付けなければ、ゆっくりと起き上がって溜息をついた。

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