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複雑な模様を画くその双眸に澄むような蒼
見惚れてしまいそうになるけれど

「僕以外見ちゃダメですよ」

その時息を呑んだ。戦場において力もない彼に向けて氷を放った。
確実に彼の動きを止めるまでの氷は張れたはずなのに、彼は僕の目の前で蒼を見せた。
攻撃を与えるまでの氷は出さなかった、瞳以外を除けばほぼ一般人の彼がどうして

「……僕を避けるなんて、酷いじゃないですか」

最早意味を成さない氷を砕いた、こんな年下の男の子に翻弄されるなんて僕らしくない
彼は一体何がしたいか分からない、ライブラに入って来た当初は何がしたいか分かりやすい性格だと思っていたのに

「避けてないさ。ただ、殺意が感じられたからね」

僕は嘘を喋った。殺意なんてものはない
それをとっくに見破っている彼はいつものように笑った。

「僕がどこまで見えているか、ご存知ですか?」

そりゃもう、想像以上の事だろう
視ることに関しては万能だ、欠点なんてほぼないだろう
教えてあげますよ、と先程のような笑顔のまま首を軽く絞められた。

「さあ、視てください」
「少年、やッ、めろ……」


そういった感覚もない、なのにどうして僕はこういう展開になっているんだ。
目の前に広がる視界は嬉しくもない、なんだって自分が犯されている光景を見なくちゃならないんだ

『神々の義眼をッ…そんな使い方、するんじゃ……!』


目を閉じた。
自分の身に何か影響があったワケでもない
視覚を除いては、だが

ぐっと腕を掴まれた。非常に力がこもっていて、爪が食い込むぐらい痛い
険しい顔をして睨めば嬉々とした少年の顔が、彼は一体何を考えて居るんだ

「ふざけるのもいい加減にしてくれないかな」
「ふざけているように見えちゃうんですか?」

表情は変わらないのに、悲しげに見えるのはきっと目の錯覚だろう
見て見ぬフリをし、変わらずまだ彼を睨み続けた。

「僕はスティーブンさんのようには戦えません、だからこそ卑怯な手を使わなくちゃいけない時もあるんです」
「だからって君はそれでいいのか?神々の義眼、あまりこういった使い方はしたくないんじゃなかったのか?」
「まだ分かりませんか?手に入れる為なら何だってするって言ってんですよ」

何を言っている?手に入れる?僕が何かを持っているのか?
腕の力が更に強まる、きっと腕に跡が立派に残ってしまうだろう

「本当にやめてくれ、容赦しないぞ」
かなり怒りを込めた、これ以上彼にペースを崩される訳にはいかない
それが何よりも嫌で、調子が狂って仕方がなくなるのだから

「……仕方ないですね、スティーブンさんを怒らせるのは本望じゃない」
潔く離れ、散らばった氷の欠片を拾ってから振り向いた。
「でも僕、あまり翻弄されるの好きじゃないんで」
蒼は、隠れていた。何となく心底ホッとした。
だがその言葉の意味を、僕は彼の背中を見てから小さく震えた。


そういえば僕のこの氷、靴裏から僕の呼応に応えて攻撃を繰り出すけれど
どうしてあの時、氷は砕けたんだ?彼に恐れをなしたからか?まさか、な

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