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「―――…悪いけど、全然分からないわ
あんたが言った通り、魔導器も付いてないみたいだし」
そっか、とレイヴンは唸った。
「…でも、もうちょっと見させて…
なるべく、居ないでもらえると助かるんだけど」
「分かったわ、そいじゃ…あそこの本まみれの宿で一泊してる」
レイヴンはアレクセイを一度見、出ていった。

「――――ッ、あんたなんか…ッ!!」
アレクセイは首を傾げた。
急な変わりようのリタに疑問の視線
「大ッ嫌いなんだからねッ!」

鈍い音が響いた。
油断していたのか分からないが、案外あっさりとアレクセイは倒れた。

「ヴぁっ……リ、たさん…?」
かなり戸惑っているアレクセイ
「気安く呼ばないでよ!…大罪人がのこのこ帰って来て…!」
リタはどうしても許せなかった。
エステルを酷い目に合わせ、レイヴンもあんなにして…。
過去のアレクセイ?…そんなの知ったこっちゃない

「…すミマせん、私…ゴめんなサい……」
「今更何よ、あんたのせいで…っ!」
アレクセイは目を瞬かせ、再び謝り始めた。



「リタっち~って…あれ……」
勝手に家に入るのもどうかと思ったがやけに物静かだった。
階段を上って彼女を捜せば居たことは居たのだが

多少傷だらけのアレクセイがリタを守るように近くの椅子に座っていた。
近寄って見ればリタの目元や鼻が朱く染まっている。
「おはヨうございマス、シュヴァーン」
すやすやと寝ているリタからアレクセイに視線を当てた
「…どうしたのよその傷、」
聞かなくても分かる、痣が出来ている。
「リタに叱らレマした、でモ…私ガ原因、ダからリタ、悪くなイでス」

決して、相手を悪いようには言わなかった。
レイヴンも少々、納得はした。
彼女は感情が抑え切れなくなっていたのだろう
暴力を振るったのはどうかと思ったが


「ぁ、おっさん…来てたの…?」
「まーね…それで何か分かった?」
リタは体を起こした、近くにあった小さなノートをぺらぺらめくる
「このアレクセイは確かに記憶がない
元々なかった、って捉えるのがいいかもしれない」
「けど…何で俺を捜しに……」
そこはリタもお手上げのようだった。
「あたしも聞いたけど…何も喋らなかったわ」
そっか、とレイヴンは息を一つ吐いた。

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