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もう何年前になるでしょう
はっきりしているのは、私がまだ幼かったということ

いつもいつも、私は城中を歩き回っていました。
外に出られないという退屈さに窓から景色を見て世界を想像する。
そんな日々に抜け出したくなりはするが、勇気 いや、何かが足りなかった。
どちらかと言えばエステルはまだ読破していない本に夢中だった。
そうだ、そろそろ時間 時計を見て静かに立ち上がった。

(……今日は、お稽古です)
指導してくれるドレイク師匠が私を見てくれる、はずだった。
剣と盾を用意し、いつもの訓練する場所へと向かえばそこにはドレイク師匠はいなかった。
そこには代わりにあの、騎士団長であるアレクセイ・ディノイアがいたのだった。
驚きと期待に首を傾げながらも近寄った。

「あ、あの…師匠は?」
「ドレイク殿は先程急な出張ということで、出ていかれました。しばらくの間、私アレクセイが 姫様の指導を担当させて頂きます」
「は、はいっ よろしくお願いします」
ペこりと頭を下げれば、アレクセイは膝をついて辞儀をした。

稽古はいつも通り行われた。
アレクセイ、といえば話にはよく聞くが 長く話したのは今日が初めてかもしれない。
(いつも厳しい顔をしてるから、なんだか怖い人なのかと思ってましたが……)
ちょくちょく見る自然な表情は、確かに厳しさもあるのだが 普段の、何か深さを感じるものではなかった。
しかしエステルはそこまで考える余裕はなく、彼は優しいんだという印象が芽生えた。

「姫様、先程の盾の構えではこちらががら空きになってしまうので良くないですよ」
「えっと、こうです?」
「そうですね、常に心臓を守るように 中心を心掛けると良いです」

数時間による稽古が終わり、お互いに会釈をして終了になった。
使用人と共に戻ろうとする前に引き止められた。
「姫様、良ければこれを…」
アレクセイの手中にあったのは、小さな袋に包まれたものだった。
「これ、は?」
「飴です、少々苦いかもしれませんが」
使用人に行きましょう、と促され私はまた礼をしてからその場を離れた。


その日からしばらくはアレクセイが私の稽古を見てくれていた。
馴染んだ今は、アレクセイとお茶を楽しんだりするようになった。
しかし、アレクセイから誘ってくれることはなく 段々不満が募っていった。





恋愛物書きさんに30のお題 28.手を繋いでどこまでいこう 天使祝詞様

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